第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
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メイド服を着たシエスタは、風呂釜で顔を赤くして顔をまだ背けている士郎に向き直った。
「あの……その……」
先程の大胆さは鳴りを潜め、もじもじとした仕草で俯き、何事か呟くシエスタに気付いた士郎は、まだ赤い顔をシエスタに向ける。
「シエスタ?」
士郎の訝しげな声を聞いたシエスタは、バッとその真っ赤な顔を上げると、全身を震わせた。
「い、いつも、こんなことしてません……シロウさん……シロウさんだから……」
「えっ?」
それはつまり、俺がここまでされても、女性に襲いかかったりしないことを信じていた。ということなのか? いつの間に、俺はそこまでの信頼を築いていたんだ? いや? もしかしてこれは落ち込んだほうがいいのか?
士郎が何事か悩んでいるのを見たシエスタは、小さくため息を吐いたあと、何事か小さく呟く。
「はぁ……わたしって魅力ないのかな?」
軽く顔を振ったシエスタは、再度何事か悩んでいる士郎を見ると、風呂釜の中で一人頷いた時と同じように何事か考えたあと頷き、またもや何か決意を秘めた眼差しを士郎に向け、バッと勢い良く頭を下げた。
「それでは、わたしもう行きます……そ、それとっ! こ、今度もま、またお願いしますっ!」
「へっ! ま、また? ちょっ、ちょっとシエスタっ! それって……」
シエスタの最後の余計な一言に我に返った士郎は、慌ててシエスタに問いただそうとしたが、既にシエスタの姿は既にそこにはいなかった。
「何をお願いしますなんだシエスタ……」
人影が全くなくなったヴェストリの広場の隅っこで、士郎の呆然とした声が虚しく響いた。
湯からあがって、ルイズの部屋に戻ると、ルイズはベッドの上で何かをやっていた。ルイズは士郎の姿を見ると、慌ててそれを本で隠した。見たことのない、古ぼけた大きい本であった。
しかし、士郎はそれに気がつかず、ルイズの前を横切っていった。何故なら、士郎は先程のシエスタの言葉が気になり、上の空の状態であったためである。
上の空の状態であっても、士郎はいつもの習慣で洗濯物の入ったかごに近寄っていくと、それを持ち上げた。しかし洗濯かごを持ち上げた瞬間、その中に何も入っていないことに気付いた士郎は、やっとそこで我に返った。
「? ルイズ洗濯物が何も……ルイズ……何やってるんだ?」
士郎がベッドの上にいるルイズに振り向くと、士郎は疑問の声を上げた。何故ならルイズが士郎の服を着ていたからだ。
ルイズが今着ている士郎の服は、士郎がこの世界に来てからルイズから渡された服があり、今までに何度か着たことがあったのだが、部屋の隅にたたんでいたそれが今、士郎の目の前で何故かルイズが着ているのだ
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