第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…その、そんなにじっと見られたら、さ、さすがに恥ずかしいんです……が……」
「あっ! すっ、すまない」
シエスタの言葉に、士郎は慌てて顔を背けると、シエスタは顔を俯かせた状態で、士郎を上目遣いで見つめてきた。
「で、でも。シロウさんが見たいなら、が、我慢します……」
「い、いやいや。大丈夫だからっ! 我慢しなくてもいいからっ!」
「あっ……そうですか……」
シエスタの覚悟が含まれた言葉を聞いた士郎は、慌てて顔を振りながら答えた。すると、なぜか残念そうな表情を浮かべたシエスタは、落ち込んだ様子で肩を落とした。
なんでさ……だから何で落ち込むんだよシエスタ。はぁ、こういうところも彼女にそっくりだな。
「そう言えば、シロウさんの国ってどんなところなんですか?」
「ん? 俺の国か……そう、だな」
シエスタは肩を落として落ち込んでいるものと思っていた士郎は、急にシエスタに声を掛けられたことに驚きながらも、目を閉じて久しぶりに昔のことを思い出す。
「そうだな……平和な国だ。戦争はなく、基本的に差別もなく皆平等に暮らしている」
「平、等? そんな国が本当にあるんですか?」
「ああ、ここからずっと遠くにな……」
「シロウさん?」
どこか寂しげな様子で呟く士郎に、シエスタが心配気に声を掛ける。士郎はかすかに笑いながらシエスタの濡れた頭に手を置き優しく撫で始めた。
「そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫だ。確かに故郷を懐かしくは思うが、そんなに心配されるようなことはないよ」
「……はい」
しばらく士郎にされるがままに、頭を撫でられていたシエスタだったが、士郎が頭から手を離すのと合わせるようにして、胸を押さえながらお湯の中から立ち上がった。
プルン! ではなくブルン! と大きく揺れる胸に、思わず目がいってしまった士郎だが、シエスタがその視線に気付くギリギリに何とか顔を背けることに成功した。
「ありがとうございました。このお風呂、とっても気持ちよかったです」
「あ、ああそれは良かった」
シエスタはそう言うと、風呂釜から出て行く。
ッッ! だからっ! 何でこう無防備なんだよっ! 見える! 見えるって!
シエスタは士郎に笑いかけたあと、まるで見せつけるかのようにゆっくりとした仕草で風呂釜から出たことから、その際色々と見えてしまいそうになり、士郎は顔を赤くしながら慌てて顔を背けた。
それを風呂釜から出たシエスタが、真っ赤な顔をして横目で見ると、拳を握って小さくガッツポーズをしたいた。
そして、服を脱ぎ出した時、ちゃんと風呂釜の火で服を乾かせるように置いていたことによりすっかり乾いた服を、脱いだ時とは違っていそいそと服を着始めた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ