第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
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める士郎の顔があった。
呆然とした表情で固まっていたシエスタだったが、裸の士郎に抱きとめられていることに気付くと、慌ててお湯の中から立ち上がった。
「すっ! すすすすいませんっ!」
慌てて頭を下げるシエスタを見た士郎は、苦笑いすると首を振って笑いかけた。
「いや、謝るようなことじゃない。それよりも怪我はないか?」
「あ、はい。怪我はないようなんですが……」
シエスタはビショビショに濡れたメイド服を見下ろし、何か考えるような仕草をすると、うんっ! とでもいうかのように勢い良く顔を頷かせ、何かを決意したような目を士郎に向けた。
すると、シエスタの仕草に疑問の顔を浮かべる士郎の目の前で、何とシエスタはバシャンっ! と音をたてながらお湯の中に膝を着き士郎を見上げたかと思うと、くすくすと笑い出した。
「ふふふ」
「シエスタ?」
士郎が急に笑い出したシエスタに訝しげな顔を向けると、シエスタはお湯に浸かりながら星空を見上げ、どこかボーッと惚けた様な表情で士郎に笑いかけた。
「気持ちいいですね……もしかして、これがシロウさんの国のお風呂なんですか?」
「ん? ああ、まあそうとも言えるな。しかし……」
シエスタの急な行動に驚きながらも、表面上は士郎は冷静な態度をとり続けていた。
「普通は服を着ながら入ったりはしないんだが」
士郎は服を着たままお湯に浸かって気持ちよさそうにしているシエスタを支えながらも、こぼすことなく手に持っていたカップのお茶を口に含んだ。
「っ! ……やっぱりそうですよね。でも……ううんっ! そう、そうよね……じゃあっ! わたし脱ぎますっ!」
「ぶっ!」
「―――きゃんっ!」
どういう思考経路でそんな考えに至ったのか、突然のシエスタの宣言に、士郎は口に含んだお茶を吹いてしまう。士郎が吹いたお茶はまるで悪役レスラーが使う毒霧のように、目の前でお湯に浸かっていたシエスタの体にぶっかけてしまった。
士郎に緑色の液体をぶっかけられてしまったシエスタは、一瞬呆然と自分の体を見下ろし、どこか妙に熱いため息を吐くと顔を俯かせた。
「んっ、ぅあ……はぁあ……あ……。あ〜あ……汚れちゃった……」
「すっ、すまんっ!」
先ほどまで泰然自若の態度をとっていた士郎だったが、冷静な態度をかなぐり捨てたかと思うと、慌ててシエスタに謝った。
しかし、シエスタは霞かかった瞳で士郎を見上げ、バラ色に頬を染めた顔にかかった茶を指先で拭うと、指先に付いた緑色の液体を舐ぶる様に口に含みながら、ゆっくりと首を左右に振るう。
「んむ……ん、にが。ん……ううん、シロウさんは謝らなくていいですよ……ふふ……このままじゃお湯を汚してしまいますね……うん、やっぱり服を脱が
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