第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
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えきれず、ニヤニヤとしながら服をいそいそと脱ぎだし、湯に浮かべた蓋を踏みながら大釜につかっていく。
「っあ〜……やっぱりこれだな……」
タオルを頭に乗せ、目を閉じる。
大釜の横の壁に立てかけたデルフリンガーが、そんな士郎に声をかけた。
「いい気分みてえだな」
「ああ、いい気分だぞ」
「ところで相棒、この前は本当に寝ていたのかい?」
「? 何のことだ?」
デリフリンガーの突然の言葉に、士郎は訝しげな顔を向けた。
「その様子だと本当に寝ていたみてえだな」
「だから何のことだ?」
「いや、相棒が知らねえならいいんだがよ……罪な男とはこういう奴のことを言うのかねぇ」
「? すまん、よく聞こえなかった」
デルフリンガーが小さく呟いた言葉が聞き取れず、士郎は聞き返したが、デルフリンガーは小さく笑うだけで教えてくれなかった。
士郎が再度聞き返そうとするが、人の気配がしたため、開きかけた口を閉じ、気配を感じた方向に振り向き誰何する。
「俺に何かようか?」
声を掛けられた人影は、ビクっと体を震わすと、持っていた何かを取り落とした。するとがちゃーん! という陶器が割れる甲高い破壊音が月夜に響き渡った。
「―――わわわ、やっちゃた……。うう……また怒られちゃうよぅ……」
その声で人影の正体が気が付いた。
「シエスタ、か? どうしてここに?」
月明かりに照らされて姿を見せたのは、アルヴィーズの食堂で働くメイドのシエスタだった。仕事が終わったばかりなのか、いつものメイド服だったが、頭のカチューシャを外していた。肩の上で切り揃えられた黒髪が、艶やかに光っていた。
スカートをそっと片手で抑えながらしゃがみこむと、シエスタは地面に落ちた割れた皿に混じった何かを一生懸命に拾い始めた。
「手を切ると危ない。俺が拾おう……すまないが少しの間でいい。向こうを向いていてくれないか」
士郎が戸惑いながらもシエスタに声を掛けると、シエスタはバッと起き上がり両手を顔の前でブンブンと左右に振った。
「い、いえっ大丈夫ですからっ! シロウさんはそのままで大丈夫です。そ、その……とても珍しい品が手に入ったので、シロウさんにご馳走しようと思って。本当は今日、厨房で飲ませてあげようと思ってたんですけど、おいでにならないから……」
慌ててここにいる理由を言うシエスタの隣には、ティーポットとカップが乗っているお盆があった。
どうやらシエスタは声を掛けられた拍子に驚いて、カップを一個落として割ってしまったらしい。
「ご馳走?」
士郎はシエスタの言葉に興味を惹かれ、風呂釜から少し身を乗り出すようにしてシエスタを見る。
そんな様子を見たシエスタは、そこでやっと士
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