第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
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、タバサはベッドの上に腰を掛けて本を読んでいる。そんなタバサに、隣に座ったキュルケが話しかけている。
「最近、ルイズの攻勢が激しくなった気がするのよ……」
「……」
キュルケの愚痴にタバサは無言で答える。
「最近は同じベッドで寝ているそうだし、いつも一緒にいるし……」
「……」
「食堂では『あ〜ん』よ『あ〜ん』。信じられる? あのルイズよ。あのプライドの塊のようなルイズが『あ〜ん』……あたしもしたいのに……」
「……」
「ねぇタバサ。何か言ってよ」
「何か」
タバサがキュルケの訴えに、本から目を離さずにそう言うと、キュルケは顔を真っ赤にさせてタバサに抱きつく。
「……」
「何よもうっ! 何が『何か』よっ! このっ! このっ!」
「……」
「何よもうっ! 悲鳴ぐらい上げなさいってこのっ! このっ……この……こ……」
タバサに抱きつき立ち上がり、ブンブンとタバサを振り回していたキュルケだったが、急にギュッとタバサを強く抱きしめると、タバサの髪に顔を埋めた。
「?」
「初めてなのよ……こんな気持ち……」
「キュルケ?」
「最初はただ、からかっていただけなのに……」
頭に感じた濡れた感触に、タバサが心配気にキュルケの名を呼ぶが、キュルケはそれに答えずにただ呟き続ける。
「はぁ……まったくこれじゃ“微熱”の名が泣くわね」
「……がんばれ」
「ふふ、ありがとタバサ」
キュルケは珍しく慰めの言葉を言ってくれたタバサに礼を言うと、タバサをベッドの上に置き、扉に向かって歩き出す。
「いつもごめんねタバサ」
「別に……」
「おやすみタバサ」
「おやすみ……」
扉の取っ手に手をかけたキュルケは、振り返らずにタバサに声をかけたあと部屋から出て行った。
バタンと扉を閉めたキュルケは、閉めた扉に寄りかかると、薄暗い廊下の天井を見つめ、微かに笑うと誰にいうことなく呟いた。
「あたしを本気にさせた責任……とってもらうわよ……シロウ……」
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