第三章 始祖の祈祷書
第三話 溢れゆくもの
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からすまんかったと……」
「はあ、次はどうなるかわかりませんよ」
はあ……全くコルベールくんも厄介なものを書かせてくれたものじゃの……。
オスマン氏は、コルベールが学院の女生徒と女教師と協力して自分に誓約書を書かせたことについて心の中で文句を言っていると、ロングビルは一度ため息をつきながら机に向き直り仕事を再開した。
それを横目で確認したオスマン氏は、ロングビルの最近のイライラの原因である男の姿を思い浮かべた。
はあ、まったくシロウくんは何をやっているんだか。彼が最近ミス・ロングビルの事をかまってあげていないから、そのとばっちりがわしにふりかかってくるんじゃがのう……。
そう、士郎達がアルビオンから戻ってきてから、ルイズが四六時中士郎にべったりであることから、ロングビルが士郎に上手くアプローチ出来ず、最近ロングビルがイライラしっぱなしだったのだ。
オスマン氏が心の中で、今日何度か目のため息をつくと、ノックの音が学院長室に響いた。
ロングビルがオスマン氏に伺いをたてようとしたが、その前にオスマン氏が来室を促す。
「鍵はかかっておらんぞ。入ってきなさい」
扉が開くと、一人のスレンダーな少女が入ってきた。桃色がかったブロンドの髪に、大粒の鳶色の瞳。ルイズであった。
「失礼します。あの……わたしに話があると」
おずおずと入室してきたルイズを、オスマン氏は両手を広げて立ち上がり、この小さな来訪者を歓迎した。そして、改めて先日のルイズの労をねぎらった。
「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れは癒せたかな? 思い返すだけでつらかろう。だがしかし、おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのじゃ」
優しい声で、オスマン氏は言った。
「そして、来月にはゲルマニアで、無事王女と、ゲルマニア皇帝との結婚式が執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
それを聞いて、ルイズは悲しくなった。自分は今、好きな相手と一緒にいることができる。しかし幼馴染であるアンリエッタは、好きな人が死んで間もないというにもかかわらず、政治の道具として、好きでもない皇帝と結婚するのだ。同盟のためには仕方がないとはいえ、ルイズはアンリエッタの悲しそうな笑みを思い出すと、罪悪感に胸が締め付けられる。
しかし、だからと言って自分が何か出来るとは思えない。内心の葛藤を押さえ込みながら、ルイズオスマン氏に黙って頭を下げる。オスマン氏はしばらくじっと黙ってルイズを見つめた後、思い出したように手に持った“始祖の祈祷書”をルイズに差し出した。
「これは?」
ルイズは、怪訝な顔でその本を見つめた。
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書? これが?」
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