暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
血塗れ交響曲
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言葉を紡ぐと腹部から激痛が走ったが、少年は無視した。

ただ真っ直ぐ、前を見る。

闘っている時に死角となっていた場所。《凶獣》の後方で己を見る、一人の女性を。

「何でだよ…………リータねーちゃん……」

「………………」

唇の間から漏れる掠れた言葉に、しかし蒼い髪を持った、矢車草の名前を持つ女性は何も応えない。ふらつく足元のせいで左右に揺れる少年を、長めの前髪の奥から見下ろしているだけだ。

ゾクリ、と背筋に冷たいものが走る。

血で血を洗うほどの、文字通りの地獄の中を生き抜いてきた紅衣の少年を凍りつかせるほどのナニカが、目の前の女性から発せられている。

その名は、感情。

殺意ではない。

悪意ではない。

害意でもない。

ただ単純に、リータの全身から放出されているナニカの感情の塊だけで、少年は尻込みしていた。

その圧力のせいか、遠くにいるドラグラのメンバー達はこちらを見ているだけで動こうとしない。リーダーである《凶獣》は、回復POTを飲みながらこちらを余裕げに見ている。その口許は真横に裂け、ニヤニヤと嗤っている。完全に面白がっている眼だ。

あんな笑み、ねーちゃんだったら浮かべなかったのに…………。

ぼんやりと思う思考は、もはやあまりの事態に正常な働きを放棄しようとしていた。

十数時間くらい前に、目の前で快活に嗤っていた女性と、今現在目の前にいる女性とがまるっきり重ならない。まるで、タチの悪い双子主演の映画でも見ているようだった。

しかし、意識の底の底ではもう分かっている。

この劇の、茶番劇の真相が。

「……………ねーちゃん……だったのか。情報屋に、自分が誘拐されたっていう事を流したのも、アイツ等がたむろってるこの場所を指定したのも………」

「そうよ、ぜーんぶお姉さんのし・わ・ざ」

「なんで…………」

冗談みたいにガクガクと震える膝を両手で押さえる。

そんなレンを、やけに能面のようなのっぺりとした、表情のない顔でリータは口を開く。漏れ出したのは簡潔な言葉の羅列だった。

「六日前、私の恋人が殺されたのよ。それだけ言ったら、お姉さんの考えは読めるでしょ?」

「ふく………しゅう……」

ゴホッ、ゲホッ、と咳き込むと、血の欠片が押さえた手のひらに紅い斑点を付ける。

「つまらない理由でしょ?でもね、お姉さんには大切な人だったのよ。殺人者(あんなひと)でも………」

自嘲気味な笑みが、女性の口許に広がった。

それが誰に対してかは、いうまでもないが。

リータはそこで、己の背後を振り返り、佇む殺人者達に声を掛けた。

「あんた達も、巻き込んでごめんね。後で私を殺してもいい。だけど、今だけは見逃してく
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