第五話【策士は策に溺れてくれ】
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たくない。と言う意地の方が強い。
「加藤君っ! 俺達が逃げ切って勝利は頂くぜ。そして、アイスは俺達、B組が貰うからな」
加藤君から逃げながら後ろも見ずに叫ぶ。
「それは困ります。こっちらもそう易々とアイスを渡せない理由もありますからね」
と言って加藤君と俺の戦いが始まった。しかし、持久戦は大地が不利になりつつあった。
残り六十秒。生き残り俺と凛と神(かん)凪(なぎ)さんの三人になっていたらしい。神凪さんは運動が嫌いなのか何処かに隠れているらしい。半数の鬼は神凪さんを捜して、後半数は俺と凛を捕まえようとしている。
加藤君、結構体力あるのかよ! 見た目で人は判断してはいけないってこういうことか!
「もう、諦めたらどうでうすか? 僕が力尽きても、他の鬼が君たちを狙ってくるんですよ」
加藤君は問いかけるように叫ぶ。俺は叫びたい気持ちを抑え、全力ダッシュをする。
するとついに加藤君が追いかけるのを諦めて歩き出す。
これは逃げ切った。と思った時、加藤君の後ろからC組の鬼を連れて陽奈が全力で追いかけてくる。
俺は悟った。俺が最後の生き残りだと、B組の最後の希望だと、逃げ切れば……B組の英雄だと! なら、逃げ切るしかない。
「そして、凛からアイスを奪ってやる!」
「それは、まだ分からないわよ?」
目の前から凛の声が聞こえる。凛の後ろにもC組の鬼が!
「なんで、前から来るんだよ!」
挟み撃ちとか、無理だろ?
「知らないわよ! 大地がそっちから来るからでしょ?」
「仕方ないだろ、加藤君に追いかけられていたんだから!」
加藤君……。もしかして、これを狙って今まで必死に追いかけていたのか?
チラッと後ろの加藤君を見る。加藤君は笑っていた。どうやら、俺は加藤君の手のひらで踊らされていたようだ。
さて、どうする。目の前には凛と鬼。引き返そうにも後ろには、陽奈とか。ここは二階の廊下で当たり前だけど一本道。多くの人を交わせるスペースもない。そして、あの数から逃げ切るほどの体力は残ってないんだよ。
「君は! 諦めるのかい? 折角、僕から逃げ切ったのに、君は諦めてしまう器なのですか?」
この声は! 加藤君? そうだ! まだ、逃げ切れない訳じゃないはずだ。なにか手があるはず。この残り少ない体力で出来るなにかが。
「みんな、残り三十秒を余裕で切った。陸上部の人は本気で大地と凛を捕まえて」
もう、考える時間がない。陸上部のクラスメイト中心に走ることを得意とするクラスメイトがすぐそこまで迫っている。
逃げ切る手はないのか? クラスメイトから逃げ切る手を! 考えろ、きっと何処かにあるはずだ! この状況を覆す活路が。……っ! こうなったら、やるしかない。
俺は近くの窓を開ける。
心の準備をする暇はねぇ。すぐに飛ぶ
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