本編 第一部
三章 「戦火の暗殺者」
第二十二話「追撃」
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魔術師は、フリーランニングさながらに、この町を縦横に駆けていく。だがそれにぴったりとくっついて離れない賢治に魔術師は驚愕した。(く、まったくなんなんだ?日本刀で魔物を一刀両断にする剣術娘に、俺の呪術さえも跳ね除ける力をもった女だと?まったく“バハムートの娘”の周りは化け物ぞろいじゃねえか。さっきからこの俺の足でぜんぜん振り切れないこの男にしてもどうなってやがる。これじゃ、当初の目的もなにもあったものじゃないぜ!)
伊佐は、魔術師を追うときはじめに三人の追っ手によって追跡を阻まれ、今、魔術師を追えているのは、賢治ただ一人だった。
賢治と魔術師は、ものすごいスピードで屋根伝いに走り続けている。魔術師は、業を煮やして、鉄のニードルに呪いをかけて三本、ものすごい高速で投げた。
賢治の両手にはあの籠手が装備されていた。なんなく弾き飛ばす。しかしそのニードルは呪いがかけられていたのだ。賢治の体がなにか重く感じる。見るとニードルが足と足の甲に突き刺さっていた。
「ぐあああ。なんだ、これ」
「けけけ、それは、いったん目標を定めたら絶対外れねえ。いっとくが無理に引き抜こうなんて止めた方がいいぜ?そいつがもっとお前の肉に食い込むだろうからなぁ!そらぁ!そろそろ、死ねよ!拳法家くずれ!」魔術師は、剣を抜き放つとその剣にもまた呪いをかけた。すると剣はまるで生きてるように自分で宙に浮き、こちらに刃を構え、回転しながら突っ込んできた。
「うおお!」
寸前で、体をそらして、避ける賢治、剣はすばやく方向修正してまたこちらに飛んでくる。
ガキィ!剣と剣が擦れ合う音が響く。
「うん?さ、桜花?」
「まったくなんで、わたしがこんな不良を助けなきゃ行けないの?まったく、だけど人に刀向けるわけにはいかないじゃない。あなたはあいつを捕らえなさい。逃がしたりしたらただじゃおかないから!」
「すまねえ、桜花。あとでなにかおごってやるよ、おい、待てっこのエセ魔術師!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ん?」
「あなた、足を怪我してるじゃない!どうしたのよ、それ」
「ああ、あいつのクナイを避けそこなっただけだ。これでも鍛え方が違う、たしかに三本とも貫通してるが、周りの筋肉で出血を止めてずれないよう、筋肉で締めて固定してるから大丈夫だ」
「だけど!わたしはね、おじいちゃんが接骨院やってるの、どうみても致命傷よ?」
「桜花、豊村を、あいつを救うには、このくらいのことは覚悟してなきゃダメなんだ。すくなくともそういうやつが一人はいないとな、豊村は、あいつの抱えてるものは重すぎる。だれかが一緒に背負ってやんねえと・・・・・・」
「・・・・・・くっ!う〜、じゃあ、三十分!」
「へ?」
「三十分だけなら、わたしのおじいちゃんが治せる範囲だわ、その重症でもね
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