第百五十四話 北ノ庄その五
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「向かう」
「それでは」
「うむ、ではまずはじゃ」
越前を収めることだった、かくして。
織田家の各将はそれぞれ一万とそれを率いる者達をさらに率いて越前の各地に向かった、そうしてであった。
信長も加賀との境に向かいその兵で境を守る、その下にも織田家の優れた家臣達がいる。
そのうちの一人原田がこう信長に言ってきた。
「殿、どうやら門徒達は」
「今は攻めて来ぬ様じゃな」
「越前でもことを聞いて一時加賀まで退いた様です」
「それで来ておらぬのか」
「はい」
そうだというのだ。
「どうやらですが」
「左様か」
「しかし戦の用意はしている様です」
それはというのだ。
「そしてそのうえで」
「我等が加賀に入った時に備えておるか」
「そうかと」
「越前はまだ知っておる」
この国はというのだ。
「門徒達が攻め入ってくる、朝倉を降した時より領地じゃったからな」
「はい、しかし加賀は」
「知らぬ」
その国そのものをというのだ。
「どういった国かな」
「ですな、ですから」
「迂闊には攻められぬ」
信長は険しい声で原田に答えた、加賀との境を見ながら。
確かに今そこには敵はいない、しかし信長はその目に敵を見て言うのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「加賀に入った祭は慎重にいくか」
あまり勢いよく攻め入らないというのだ。
「迂闊に進めばやられるのはこちらじゃ」
「だからですな」
「うむ、迂闊に先に進む訳にはいかぬ」
それはどうしてもだというのだ。
「だからじゃ」
「慎重にですか」
「少しずつ進みじゃ」
そしてだというのだ。
「確実に攻め取っていくとしよう」
「それでは」
「まずは権六達が越前一帯を収めてからじゃ」
残る門徒達を全て収めそうしてだというのだ。
「北ノ庄に向かい」
「あの地を確かめてからですな」
「権六の言うことなら間違いはない」
柴田は戦だけではない、政についても中々のものを見せている。だからこそ織田家の宿老の一人になっているのだ。
その彼の言うことだから信長も信頼している、だがそれでもだというのだ。
「今度築く城は大きな城じゃ」
「北陸の要ですな」
「そうじゃ、だからじゃ」
それでだというのだ。
「北ノ庄といえば」
「一乗谷に近いな」
「はい、すぐそこです」
「そこにあえて行ってみてじゃ」
そのうえでだというのだ。
「城に向いておるかどうか見てみたいのじゃ」
「城を築くにですか」
「正直一乗谷は狭いしのう」
それでだというのだ。
「越前一国はともかく北陸の抑えとしてはな」
「物足りませんな」
「左様ですな」
竹中と黒田の二人の軍師が応えてきた。
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