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戦国異伝
第百五十四話 北ノ庄その三

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「百姓は村におるものじゃ」
「そうです、我等もその村におります」
「しかしあの者達は村では見ませんでした」
「誰も」
 僧侶達も彼等がいる村で見なかったというのだ、このことも信長にとっては奇怪としか思えないことだった。
 それでだ、こう言うのだった。
「山窩か」
「山窩といいますと」
「あの」
「そうじゃ、山の民じゃ」 
 それではないかというのだ。
「美濃等には結構おる様じゃがな」
「いえ、山窩は我等の中におりませぬ」
「あの者達は」
 一向宗の僧侶達は信長のこの見立ては一様にないとした、そのうえでそれが何故かも信長に対して語るのだった。
「我等は親鸞上人より民達の中に入っております」
「民百姓はどうしても、生きる為に罪を犯すものです」
 このことが親鸞の考えの根幹にある、一向宗は全てこの考えからはじまっているのだ。
「そしてその罪を救うのが我等です」
「我等は民百姓を救うことが務めです」
「罪を犯してしまわざるを得ない悪人を」
「悪人とは何か」 
 信長も言う。
「悪人は己の罪を自覚しておる者じゃな」
「はい、その通りです」
「それが民百姓です」
「ですから我等は百姓達を救うのです」
「それが務めなのですから」
 僧侶達も言う、まさにそうだと。
「ですから山窩については」
「どうも」
「そうじゃな。そもそも山窩が山から降りてくることもない」
 信長は山窩も知っていてそのうえで言うのだ。
「ましてあの様に鉄砲を多く持っていることはな」
「しかも異様に数が多く」
「全く以て訳がわかりませぬ」
「骸は全て埋めておる」
 そのうえで弔っている、これは信長だけでなくどの者もしていることだ。このこと自体は信長も当然としている。
「骸があることを見るとな」
「何処かから来た人であることは間違いないですが」
「それでも一体」
「御主達も全くわからぬか」
 信長は腕を組んでいぶかしむ。
「余計に何者かわからぬな」
「とりあえず我等はもう一揆は起こしませぬ」
「顕如様も無駄死にはするなと仰っていますし」
「ですからこれで」
「民達と共に」
「うむ、もう武器は持つでない」
 信長もこのことを言う。
「御主達の武器は全て取り上げる、刀も槍もな」
「はい、承知しております」
「それでは」
 彼等も持っている武器を進んで差し出すことを約束する。信長は検地と共に刀狩りも行っているがそれに従うことにしたのだ。
 それで信長の刀狩りに従うことにした、彼等についてはこれで終わりだった。
 しかしわからないことはそのままだった、信長は彼等を帰らせてからも首を傾げさせて言うのだった。
「解せぬことばかりじゃ」
「村におらぬ一向宗とは」
 羽柴も訳がわからないといった顔で言う。
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