第五十七話 成長その八
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「サイドカーは確かに速いがな」
「サイドカーを動かすには狭いか」
「ぶつけることはないがな」
牧村の運転技術ではだ、サイドカーで地下迷宮の通路、学園の廊下の中を進んだとしても事故を起こすことはない。
だが、だ。彼は愛実と聖花を見て言った。
「サイドカーは二人乗りだからな」
「おっと、わしだけならともかくな」
「この娘達を乗せると四人だ」
「定員オーバーになるか」
「馬に換えてもな」
牧村は二人がわからないことをここで話した、博士や妖怪達にはわかるが。
「四人は無理だ」
「そうじゃな、ではサイドカーは」
「無理じゃな」
博士もここで諦めた。
「これは」
「そうだ、確かにサイドカーを使うと地下迷宮でもすぐに移動出来るがな」
「では自転車にするか」
博士は牧村と話しつつ次はこう言った。
「それにするか」
「博士が開発したあれだな」
「あれなら普通の自転車より速いしのう」
かつて愛実と聖花も乗った自転車だ、その話になると妖怪の中にいて饅頭を食べていた夜行さんがこう言ってきた。
「わしの時のあれか」
「そうじゃ」
まさにその通りだとだ、博士も応える。
「あれを使えばのう」
「移動の速さが違うな」
「しかもじゃ」
さらにだというのだ。
「こけることはない」
「電気自転車の様にじゃな」
「そうじゃ、だからじゃ」
ここは自転車を使おうというのだ。
「そうしようぞ」
「わかりました、それじゃあ」
「地下迷宮に自転車を入れてですね」
「それで三人で行こう」
自転車での移動となった。
「ただ、今回はのう」
「今回?」
「今回はっていいますと」
「うむ、壁抜け等は出来ん」
それは無理だというのだ。
「残念じゃがあの迷宮は結界があってな」
「それでなんですか」
「壁や扉を越えられないんですね」
「それは無理じゃ」
「結界、ですか」
「それがあるから」
「造られた時に地下から邪な連中が来ない様にな」
結界が張られたというのだ。
「まず外から入ることが出来ない様になっておってな、この研究室からの出入り口は別として」
「それで迷宮の中にもですか」
「ちゃんと迷宮になる様に」
「自由に通り抜け出来る迷宮なぞ只の空間じゃ」
それに過ぎないとだ、博士は言い切った。
「そうなってしまえば万が一悪い妖怪や幽霊が迷路に入ってはじゃ」
「避難した人達を守れない」
「だからんですか」
「うむ、当時日本でも一級の陰陽師達が結界を張ったのじゃ」
「ううん、手が込んでますね」
「そこまでしたんですか」
「実は学園の中にもそうしておる」
結界を張っているというのだ。
「中に入られれば終わりでは元も子もないからのう」
「そういえばね」
「そうよね」
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