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八条学園怪異譚
第五十七話 成長その七

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「よく食べておるしな」
「高麗人参ですか」
「それもなんですか」
 二人も高麗人参のことは知っている、漢方医学の中でも最もよいとされている薬だ。それだけに高価でもある。
「いつも召し上がられて」
「それでなんですか」
「健康を保っておる」
 そうだというのだ。
「やはり健康第一じゃ」
「その前に仙人なのかもな」
 ここでまた牧村が言って来た、研究室の壁に背をもたれかけさせて立っている。その腕は組み冷静な顔である。
「博士は」
「ほっほっほ、そこまでは至っておらんよ」
 博士はその牧村に軽く笑って返した。
「わしはな」
「そうなのか」
「まだじゃ」
 自分が言うにはだ。
「わしはそこまで至っておらん」
「仙人になるには何が足りない」
「色々とな。修行も必要じゃからな」
「修行か」
「仙人になれば不老長寿になる」
 文字通りだ、そうなるというのだ。
「わしもな」
「もうとっくになってるんじゃ」
「そうよね」
 二人は博士と牧村のやり取りを聞いてこう話した。
「二百歳って話もあるし」
「それならね」
「まあ年齢の話はなしじゃ」 
 その話は隠す博士だった。
「とにかくじゃ」
「地下の迷宮ですね」
「そこにですね」
「今はあと少しで授業がはじまるのう」 
 博士は壁の時計を見て二人に話した。
「そうじゃな」
「はい、もうすぐにですね」
「部活の朝練もそろそろ」
 終わるというのだ、体育会系のそれが。
「それじゃあ私達も」
「今から」
「地下迷宮は広い」
 何しろ学園の敷地の地下全体に及ぶからだ、相当な広さだ。
「ラビリンスなぞ比較にならぬ」
「ギリシア神話のですね」
「それよりもですね」
「あんなものではない」
 ミノタウロスが入れられており犠牲者である生贄が放り込まれたそこよりもだというのだ。
「あそこはな」
「じゃあ今すぐ行って見つけることはですね」
「無理ですね」
「ちと時間がかかる、一晩でもな」
「いや、徹夜はちょっと」
「しない主義なので」
「そうじゃな、徹夜は身体に悪い」
 博士が何よりも重要だと考えている健康にも影響が出るというのだ。そしてそれは悪影響に他ならない。
「だからな」
「機会をあらためてですか」
「そうしてですね」
「日曜の朝から行こうぞ、しかもじゃ」
 博士はここで牧村を見て言った。
「牧村君のサイドカーを使うか」
「それは止めた方がいい」
 牧村は博士の提案にすぐに返した。
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