第九十話 家族の絆その十四
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「実際に」
「便利なのにな、寒い時に」
「あるとないのとでは大違いだけれどな」
「日本の素晴らしい発明の一つです」
コズイレフは使い捨てカイロについてもこうも言った。
「本当に」
「そんなに凄いんだな、使い捨てカイロって」
「あれってな」
「凄いですよ、僕も愛用しています」
「じゃあご家族にそれ送ればいいよ、使い捨てカイロもな」
「そっちもな」
「そうですね、そうします」
コズイレフは微笑み友人達の言葉を受け入れた、そうしたやり取りを自然と行っていた。そしてモスクワではというと。
彼の家族、両親と弟や妹達に祖父母がだった、暖炉の前で。
あれこれとだ、こう言っていた。
「じゃあお兄ちゃんにはなんだ」
「これを送るんだ」
「ああ、そうする」
「今度はね」
両親はそのコズイレフの弟や妹達、つまり彼と同じく息子や娘達に対してこの上なく優しく暖かい声で答えた。
「そのコートとマフラーをな」
「送るのよ」
「このコートもマフラーも」
弟の一人がそのコズイレフに送るコートとマフラーを見て言う、どれも彼の体格によく合うかなり大きくしかも生地の厚いものである。
「お兄ちゃんがロシアで来てるものだよね」
「ああ、あの子が日本に持って行けなかったものよ」
「それをね」
まさにだとだ、こう言うのだった。
「あの子に送ってあげるんだ」
「そうするのよ」
「そうなんだ」
「こうしてあの子が大事にしているものを送ってあげるとね」
母親は優しい笑顔で語る。
「喜ぶからね」
「そうだね、お兄ちゃん日本に一人でいるから」
「寂しい思いをしているだろうから」
それで気遣ってだというのだ。
「送るのよ」
「そうなのね」
「そうよ、あんた達も何かお兄ちゃんに送るものはある?」
母親は子供達にも問うた、弟や妹達にも。
「そういうものは」
「うん、僕マトリョーシカ送るよ」
「私は絵本をね」
弟や妹達も母の言葉を受けて言った。
「それとおもちゃもね」
「あとは靴下も」
奇しくであろうかそれともロシアだからであろうか、ここでも靴下が出た。
「それも送ってあげよう」
「ああ、靴下か」
「それはいいことだね」
これまで黙っていた祖父母達が靴下という言葉を聞いてこれまた穏やかな笑顔で言った。
「お兄ちゃんが寒かったらいけないな」
「じゃあそれも贈らないとね」
「そうだよね、靴下もね」
「それもね」
まさにだというのだ、弟達も妹達もコズイレフが残していった靴下を箱にどんどんと入れていった、それはやけに大きなダンボール箱だ。
それに加えてだ、さらにだった。
父は手袋、毛糸のミトンも出して来てだ、それも箱に入れた。
「じゃあこれもな」
「うん、手も寒くなるからね」
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