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久遠の神話
第九十話 家族の絆その十四
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「手袋も入れないとね」
「それで帽子もね」
「入れないとね」
「何でも入れて送りましょう」
 母は今も暖かい声であった、この上なく暖かい暖炉のぬくもりよりもまだ暖かい、その声での言葉だった。
「あの子が困らない様にね」
「けれどお母さん」
 妹一人、子供達の中で一番小さい子が言って来た、ここで。
「あまり入れたら箱に入りきらないよ」
「あっ、そうね」
「どうするの?もうすぐ箱が一杯になるけれど」
 その妹がいうのはこのことだった。
「それでもいいの?」
「それならもう一個用意すればいいのよ」
 これが母の返答だった、優しく暖かい声のまま。
「箱をね」
「じゃあ今から」
「よし、今から近くのお店で貰って来るな」
 父が席を立ってぬくもりのある声でこう言った。
「そうしてくるな」
「あっ、じゃあ僕も行くよ」
「僕も」
「私もね」
「私も行くから」
 子供達が皆だ、ここでこう言って父に従った。
「それじゃあね」
「今からね」
「後から行くよ」
「皆で行こう」
「そうだな、あの子の為にな」
「行こうね」
 祖父母もだった、母はもう父の次に無言で立っていた、気付いてみると彼等は全て立っている。そうしてだった。
 父親がだ、家族に行った。
「外は寒いぞ、暖かくして行くぞ」
「お兄ちゃんの為にね」
 母も言う、しかしここで。
 聞こえてきた、彼の声が。そしてそれは。
 コズイレフもだった、彼等はお互いの言葉、心のそれを聞いてそこにこの上ない深いものを確信したのだった。


第九十話   完


                            2013・11・29
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