第九十話 家族の絆その十三
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「それだと幸せになれるよ」
「いや、本当にな」
「それだけ家族の人達を想えるのなら」
「愛情があるのならさ」
「そうだといいですね」
コズイレフは微笑んで彼等の言葉を受けた。
「僕もそう思います」
「それでモスクワに帰ってもだよな」
「家族の人達の為に働くんだよな」
「大学を卒業してからも」
「そうだよな」
「実は高給で将来の仕事も話が来ています」
まだ大学に在籍中だ、しかし既に今の時点でだというのだ。
「そしてそのお話にです」
「乗るんだな」
「それに」
「大学の。語学の講師に」
しかもだ、只の講師ではなかった。
「将来、努力次第ですが助教授や教授への地位も約束された」
「おいおい、それはまた凄いな」
「そっちもか」
「それと共にサンボの教官のポストも。これも同じ大学のものです」
その話も決まっているというのだ。
「どちらも高給を約束してもらっています」
「地元モスクワの大学か」
「栄転だよな」
「夢の様です」
こうまで言ったコズイレフだった。
「この前に決まりました」
「そうか、じゃあ大学を卒業したらか」
「そこからはじまるんだな」
「そうです、何よりです」
満面の笑顔での言葉だった、笑顔になりながらそのうえでウォッカを飲んでその顔と心をさらに陽気なものにさせた。
「家族に楽しい思いをさせられます」
「だよな、いいよな」
「本当にな」
「そう思っています。そして今は」
「手袋と靴下か」
「それを贈るんだな」
「そうです」
まさにだ、そうするというのだ。
「それで暖かくなってもらいます」
「そうか、じゃあこういうのはどうだろうな」
ここで友人の一人があるものを出した、それはというと。
「湯たんぽとかな」
「湯たんぽ、日本の暖房器具ですね」
「ああ、殻みたいな容器の中にお湯を入れるんだよ」
そしてそのお湯で温まるというのだ。
「それはどうだよ」
「湯たんぽですか」
「お湯が冷えたら終わりだけれどな、けれどな」
「暖かいのですね」
「それかカイロな」
これも話に出した。
「使い捨てカイロ、ロシアにもあるか?」
「あまり」
ないとだ、コズイレフは首を傾げさせて答えた。
「そういうものは」
「あれ便利だけれどな」
「ロシアにはないんだな」
「日本に来て驚きました」
その使い捨てカイロを見てだというのだ。
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