第九十話 家族の絆その四
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「頭の中に直接入るのよ」
「そのままですね」
「耳に入る言葉は幻聴だと思われるわ」
「しかし頭の中に直接入る言葉は」
「今の私達と同じ様に」
「そう、それでなのよ」
こう言うのだった、智子も。
「彼等にもそうするのよ」
「ではお姉様の方も」
「既に入れたわ」
梟、それをだというのだ。
「今ね」
「ではお姉様は今は」
「もう彼の部屋の前にいるわ」
既にそこに移動しているというのだ。
「だからね」
「部屋の扉にもうですか」
「今入れたわ」
丁度だ、豊香と話をしていてその時に行ったというのだ。黄金の小さな梟のブローチを中に入れたのである。
そしてだ、そのうえで言うのだった。
「後は貴女よ」
「私が扉の中に梟を入れれば」
「そうよ、策は成るわ」
「お互いの言葉を頭の中で直接聴いて」
「そうなればね」
コズイレフがだ、どうなるかというのだ。
「彼は戦いから降りてくれるわ」
「そうなりますね」
「ではお願いするわね」
「わかりました、では」
豊香は智子が自分の脳裏に直接語り掛けてくれる言葉に頷いた、そのうえでその小さな梟のブローチを。
それを扉に置いた、すると。
ブローチは智子が言った様に濃く褐色の見るからに厚い扉の中に入った。まるで水面の中に沈む様に。
そうしてからだ、豊香は智子に言った。
「これでいいのですね」
「ええ、ただね」
「ただ、ですね」
「工夫したわ」
「ブローチにですね」
「ええ、ロシアの扉もね」
それもだというのだ。
「窓と同じく三重になっているわ」
「だからですね」
「ええ、最初の扉からね」
それからだというのだ。
「次の扉、その次の扉に入ってね」
「そしてその扉にですね」
「入ってなのよ」
それでだというのだ。
「彼の家族に伝えてくれるわ」
「そうしたこともですか」
「頭の中に入れてね」
そしてだというのだ。
「作っておいたわ」
「そうなのですね」
「先に先、そしてね」
さらにだというのだ。
「さらに先を読んでこそだから」
「策は成功しますね」
「ええ、そうよ」
それ故にだというのだ。
「且つ慎重にね」
「策を考えておられるのですね」
「策は出すのならね」
「必ず成功させなけばならない、ですね」
「そうよ、だから今回もそうしたのよ」
慎重に慎重を重ね先の先、さらに先を読んで出したというのだ。
「だから成功するわ」
「そしてまた一人ですね」
「ええ、戦いから降りることになるわ」
今度はコズイレフがだというのだ。
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