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久遠の神話
第九十話 家族の絆その三

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「成功させる為にその前にあえて失敗する策を出すことはあってもね」
「この策はですね」
「絶対にね」
 成功する策だというのだ。
「そのことは約束するわ」
「わかりました、では」
「安心して、必ずね」
 今の策は成功するというのだ。
「確信しているわ」
「では」
 豊香も頷いて応える、そしてだった。
 二人はお互いにそれぞれの場所に赴いた。豊香はモスクワの市街地にある厚い壁の赤いアパートの傍に来て智子に言った。
「着きました」
「ええ、私も見えているわ」
「ロシアのアパートですね」
「かなり頑丈な構造ね」
「そうですね、この国らしく」
 窓を見る、それは三重だった。
「防寒はかなりのものですね」
「はい、本当に」
「壁といい」
「ロシアの寒さは相当です」
 かなり厳しい、それでなのだ。
 ロシアの家は防寒はかなりのものだ、豊香はそのことを実際に目で観てわかった。そうした家、ここではアパートを観てだった。
 あらためてだ、こう智子に言った。
「このアパートの301号室です」
「そこがなのね」
「あの人のご家族の家です」
「わかったわ、それではね」
「はい、今から」
 そこに行ってであった、豊香はアパートの中に入った。
 そのうえでだ、その扉にだ。
 懐からあるものを出した。それは金色に輝く梟のブローチだった。その梟のブローチを見てだ、豊香は言った。
「相応しいですね」
「この策に使うことについてね」
「はい、梟ですね」
「梟は私の使者よ」
 そして助手でもある、彼女にとっては梟はそうした存在だ。
「キリスト教の世界で言えば使い魔よ」
「それになりますね」
「そう、だからね」
「その梟の形をしたブローチを扉に置くのですね」
「いえ、置くというよりはね」
「それよりはですか」
「扉に置くと中に入るから」
 その扉の中にだというのだ。
「本当に言うとね」
「入れることになりますね」
「そうよ、そうなるわ」
「置くとよくないのですか」
「日本ならともかくロシアではそうしたものが急に扉にあると」
 どうなるかというのだ、智子はこの辺りの事情もわかっていた。
「怪しまれるから」
「盗聴器ですね」
「ロシアでは今でも警戒されているわ」
 ソ連時代でのことからだ、ソ連はとかく盗聴器を使ってそれで人民を監視していた。電話等ではそれは常だったのだ。
 だからだ、小さなそれこそ小指の先の一節程度の大きさのブローチでもなのだ。
「怪しまれるから」
「中に入れるものにしましたか」
「扉の中に溶け入ってね」
 そしてだというのだ。
「彼に家族の声を聴かせてくれるわ」
「そうなりますね」
「それも耳に入るのではなく」
 智子の力、アテナの力を使ってだった。
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