5:容疑者
[1/10]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「キリト君、見回りはどうだった?」
「……二十一人、居る。この過疎地にしては多いな。やはり、ユニコーンの情報を聞いて集まったみたいだ」
俺は索敵スキルを駆使し、さして広くない村を一周し、滞在人数を確認していた。普通はゼロ以上数人以下が常と聞く過疎地で、この人数どうしたって多い。
「情報は知ってても狩りに出ず、それを売りに出してこっそり広めた人もいる可能性もあるわ。それも踏まえると、まぁ妥当な人数ね」
「この中に、死神と呼ばれてるプレイヤーが居る……かも知れないんですよね」
俺はリズベットとシリカの言葉に頷く。
「ああ。ヤツとて俺達と同じ人だ。わざわざ戦いながらも、ご丁寧に素性を隠してるのは、衣食住に影響が出る点も大きいのだろう」
殺人を犯していないオレンジプレイヤーなら、およそ数日、普段通り過ごせば元のグリーンに戻ってしまう。死神は恐らくその数日間だけはフィールドで人知れず過ごし、その後、次の犯行までにホームに戻るなり、宿や店で補給なりを済ませているのだろう。
この周辺一帯には、そういった施設がこの村を除けば一切存在しない。ゆえに死神は少なくとも、まず確実にこの村に居たことがあり、恐らく今も村のどこかで潜伏している可能性も高いのだ。
「この村に居るプレイヤーのカーソルは索敵スキルで見たところ、全員がグリーンだった。まぁ、事件から数日経ってるから予想はしてたけど……死神のカラーはまず戻ってしまってると考えていいな。となると、後は村の奴らと顔を合わせて話すしかないな……」
「で、どうするの? 一人ずつ、事情聴取でもしていくつもり?」
リズベットがベビーピンクの髪を揺らし、首を傾げて尋ねてくるが、俺はそれに軽く笑って答える。
「まさか。そんな面倒な事をしなくても、容疑者……死神の条件と特徴は分かっているんだ。ならまずはプレイヤー全員をかき集めて、一気に篩いにかければいい」
「え、ちょっと……なにするつもりっ?」
俺は心配そうなリズベット達を置いたまま、村の中央まで進み、長く息を吸った。そして……
「――みんな聞いてくれっ!!」
村の隅々まで響くよう大声をあげた。近くの女性陣は堪らず耳を塞いでいたが、これだけ声量を上げれば建物の中でも聞こえる筈だ。
「既にここに居る者なら全員、ユニコーンの事も、死神の事も知っている筈だ!! 俺は……死神を探している!!」
辺りの隠れから一斉に気配と視線が俺へと集まる。だが、やはりそれらは奇異や迷惑によるものではなく、驚嘆と興味のそれを感じる。
「ヤツは既にこの村に居る可能性が極めて高い!! ヤツを探し出す為に、どうか少しだけ協力して欲しい!! 皆、今からこの場所に集まってはくれないか!!」
…
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ