5:容疑者
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ぐに悔しそうな、涙を堪える小さな嗚咽が聞こえてくる。
それにアスナとリズベットは激怒した風にデイドをきつく睨んだが、やがてシリカが両手で目を拭い始めると慌てて彼女の肩に手をやり、口々に慰め始めた。
俺とて、胸の内に熱いもので沸騰してきて、握り拳に力が篭る…………が。
この男の言う事は、言葉遣いが酷いものの……正論ではあった。
MMORPGにおいて、パーティ経験値の効率は重要だ。パーティのレベル平均が崩れれば、獲得経験値に悪影響が出るのはこのSAOも例外ではない。それに、己の人気やコネをツテに甘い汁にすがる、俗に言う《姫プレイ》のプレイヤーを嫌悪するプレイヤーも決して少なくない。だが……
だが、シリカは決して、決してそんなプレイヤーではないのだ。断じて違う。
それに、俺達は経験値の為に今、ここに居る訳ではない。
その旨を伝える為に、胸の内の密かな怒りに身を任せてつい荒い言葉が出てしまわないよう、冷静さを意識しながら慎重に口を開けようとした、その時……
――ぎゅるるぅーッ!!
「ピ、ピナッ!?」
蓄積した怒りを耐えかね、けたたましい雄叫びを上げたピナが、主人の制止の手をすり抜けて、大きく羽ばたきながらデイドに向かって風を切るが如く突進した。
だが……
「っと、危ねェ使い魔だな……」
簡単なアルゴリズムであるはずの、MOB専用AIによるものかどうか疑わしくなる程のピナの激情溢れる突撃も空しく……デイドは流石の反射神経でピナの頭を片手でいとも簡単に鷲掴み、受け止めていた。
しかしピナは尚も激しく羽ばたきながら、今まで聞いた事のない憤怒の唸り声を荒げ続ける。
「うるせぇな……ったく、アイドルはペット一匹マトモに躾ける事もできねぇのかよ……!」
この言葉が更なる引き金になったようだった。
ピナは頭を鷲掴みにされたまま、怒りのバブルブレスをデイドの顔面に吹き付けた。吐き出された無数の泡が次々にデイドの顔に衝突しては破裂する。村の中は例外なく安全地帯である故にHPは一ドットたりとも減ることはないが、不快な痺れと被撃エフェクトが伴う。
「ぐぁぁっ!! 何っ……しやがるっ、こンのトカゲがァ!!」
彼なりにもシリカやピナに対して、憤慨の我慢の程があったのだろう。だが、ブレスを己の顔面に吹き付けられ、それが完全にキレてしまったようだ。デイドは真っ赤になった顔の額に血管を浮かばせて、手に掴んだままのピナの頭部を振りかぶり、シリカに向かって思い切り投げつけた。
ピィィッ、と勢い良く放られたピナの悲痛な高い泣き声が響き渡る。
「きゃっ! ……ピナッ!! ピナ大丈夫ッ!?」
幸い、シリカが体全体でピナをしっかりと受け止めていたが……
「いくらなんでも、も
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