暁 〜小説投稿サイト〜
とある星の力を使いし者
第143話
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話

「本当に?」

「ああ、約束だ。」



「そう言って指きりまでしてね。
 本当に懐かしいわ。」

制理の言葉を聞いて麻生は何も答えない。

「実はその子とはもう一度だけ会っているの。
 こんな風に雨が降っている時だった。
 私は傘を差して、公園に向かったら猫が倒れていたの。
 原因は分からないけど、凄く怪我をしていた。
 私は死にそうな猫を見て泣きそうになった。
 強くなるって決めてたのに、泣きそうになった。
 その時に、横から誰から猫に触ったの。
 瞬間、怪我が一瞬で消えて猫は元気に立ち上がって、どこかに行った。
 それを見て、私は大はしゃぎして横にいる人物を見たの。
 私は横にいる人を見ると、それはあの子だったの。
 その子は何も言わずに公園を立ち去って行ったわ。
 傘を差さずにね。」

制理は麻生の眼を見つめる。
麻生も視線を逸らさない。

「そう、こんな風な雨だった。」

二人は黙って見つめ合っている。
制理はその時、胸が大きく脈を打ったのを覚えている。
自分が助けてほしい時にやってくる、そのヒーローのような男の子に。
それを思い出した、今でも胸がドキドキする。
それでようやく気がついたのだ。
自分はその子に恋をしていると。
何で、そんな事を今まで忘れていたのか。
何で、こんな大事な事を忘れていたのか。
沈黙の空気を破ったのは制理だった。

「麻生、貴方があの時の男の子なの?」

「何でそう思う?」

「だって、特徴とか色々似ているし。」

確かにあの時の男の子は麻生だ。
それは麻生自身も分かっている。
なのに、麻生はこう言った。

「人違いだろ。」

「えっ・・・」

「だから、人違いだ。
 俺はこの公園には来た記憶はない。
 何より、そんな優しい甘ちゃんと俺が同一の人物だと思うか?」

何故、嘘をついたのか自分でも分からない。
でも、ここで本当のことを言えば何だか駄目な気がしたのだ。
本当のことを言えば、制理が危険が及んでしまうような。
麻生の直感がそう告げていた。
その言葉を聞いた制理も少し納得した表情を浮かべる。

「そ、そうよね。
 貴様のような奴とあの子が一緒な訳がないわよね。」

「そういう事だ。
 じゃあな、俺はもう行くぞ。」

「別に私に聞かなくても、さっさと行けばいいでしょ。」

それもそうだな、と麻生は言って公園を出て行こうとする。
振り向き様に制理は一瞬だけ、あの時の男の子の姿と麻生の姿が重なって見えた。
呼び止めようとしたが、寸前で止まる。

(あいつは人違いよ!
 そうに決まっているわ!)

自分に言い聞かせ、制理も別の出口から公園を出て行くのだった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ