第143話
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う一つ思い出した事もある。
その時、麻生の頬に水滴が落ちてきた。
上を見上げると、空からの雨滴だった。
それらは徐々に降り始めていく。
それほど強くはないが、傘を差すか差さないか悩むくらいの雨だった。
周りでも差す人もいれば、差さない人もいる。
麻生は後者だ。
パラパラとした雨を身体で感じながら思った。
(そう言えば、あの時もこんな雨の降っている時だったな。)
そう思った麻生は自然と、ある所に向かっていた。
少し歩くと、公園が見えてきた。
子供の頃に麻生と制理が遊んだ公園だ。
子供からすると広い公園に見えるが、麻生くらいになると狭く感じる。
滑り台やブランコなど、一般的な遊具が設置されている。
雨が降り始めたからなのか、公園の中には子供の姿が見えない。
しかし、中央に青色の傘を差した人物が立っていた。
麻生の足跡が聞こえたのか、その人物はゆっくりと振り返る。
傘を差している人物は吹寄制理だった。
今朝見た夢に思い出した記憶、それらは全てこの公園と制理が関係している。
気まぐれに訪れたのに、その公園には制理がいた。
この偶然に麻生は少し驚きつつも、それを表情に出す事なく言う。
「こんな所で何をしているんだ?」
「別に。
貴様こそ、何しに来たのよ?」
「俺も特に用はない。
近くを通っただけだ。」
制理は高校の頃に再会した麻生の姿を見ても、気がつかなかった。
そんな制理に本当のことを話しても意味はないだろう。
長居する意味もなく、麻生は公園を立ち去ろうとした時だった。
「麻生、私達って昔に何回か会っていない?」
その言葉に麻生は足を止めて、制理の方に振り返る。
制理は真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「どうしてそう思うんだ?」
「私ね、夢を見たの。」
不意に制理はそう言った。
まさか、と思う麻生。
制理は言葉を続ける。
「この公園で白い髪をした男の子に助けられる夢。
小さい頃、でこっぱちとか何とか言われて苛められてたの。
あの頃は泣き虫でただ泣いている事しかできなかった。
公園で二人の男の子に苛められている時、一人の子供が私を助けてくれたの。
その子の名前を聞いた筈なのに、大事な所は聞こえなかった。
他の子供達とその子と一緒に遊んで楽しかった。
楽しかったのに、その子はもう来ないって言ったの。
理由は分からないけどね。」
その時の事を思い出しているのか、制理は懐かしい物を見るかのような表情になる。
「私はそれを聞いてものすごく悲しかった。
思い出したから分かるんだけど、凄く悲しかった。
それで、その子はこう言ったの。」
「こうしよう。
制理が強くなったら、また遊ぼう。」
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