幕間+アリッサ:妖精の慰み ※エロ注意
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流れる様は、今呟いた言葉とまるで同じ運命を辿っているように思える。誰にも知られず、ただ流されるだけ。虚ろな気分に浸りながら、アリッサはすっかりお気に入りのスポットとなった滝壺を泳いでいた。
パウリナの手料理の御蔭で気分が前向きとなったのは変わりがない。実際、寝心地の良いウッドデッキを仮住まいとするような事は無くなったのだから。代わりに新たな住処となった場所には、鮮やかな羽根をした蝶くらいしか訪れるものはいない。たまに風が揺れて、枝葉が囁きあい、枝にかかった自分の衣類が踊るだけだった。
滝壺の住み心地はまさに至高で....麻薬的な解放感があった。燦々とした光や木漏れ日を受けて、空気のように浮かんでいるとつい考えを巡らせるのが億劫となるのだ。人間らしい高度な生活や人からのしがらみを感じない。一人の人間としてただあるがままの姿を晒す事が出来る。アリッサはその麻薬の虜となりかけていた。
ーーーでも、こうしてばかりではいられない。
かれこれ数十分は滝壺に浸かっていただろう。アリッサはゆっくりと滝壺から上がりそのまま草むらへと倒れ込んだ。青葉よりも深い碧をした彼女の瞳は静かに、風にゆらりと震えた梢を見詰めていた。
陶磁のような美白で、それでいて騎士に相応しき引き締まった肌は無防備であった。項から胸部、そして脚にかけて水気が帯びている。時間が経てばすぐにそれも無くなり、手で払うだけで服を着れるようになる。十分かそこいらの時間ではあったが、何かを真面目に考えるには丁度いいだろう。事、異性に対する問題については。
自分は、慧卓を想って何をしたいのか。今のアリッサの胸中に蟠った疑問だ。それは剣を振る気を麻痺させる程のものであった。
ーーー皆は気楽に考えているかもしれないが、私は違うんだぞ。私だけは別だ。
自然とその手が下腹部の辺りに置かれた。命の奔騰を受け止めた場所である。あの雷の日に慧卓と結ばれて、自分の中の何かが変わったのだ。慧卓を特別視するようになり、彼が傍に居るのを大事とするようになり、そして想いを交し合った。彼が行方知れずとなった今でもそれは変わりがない。
だがそれを持ち続ける事が、王女への裏切りになるのではないだろうか。自分がやっている事は結局、王女への忠誠を誓いつつも彼女が唇を交わした男を寝取るという、およそ忠誠心とはかけ離れた所業だった。ともすれば王家断絶の企みを招きかねないようなものだ。
ーーー真実を仕舞っておくか?私とケイタクが身体を重ねた事を。でもそれじゃ何もしないのと一緒だし、解決にもならない。悪阻が来ないからきっと大丈夫だとは思うけど、何時までも秘密にしたままじゃ任務に身が入らない。コーデリアから信頼を失ってしまう。
やっぱり何かしなくちゃいけないんだけど....開き直って全てを伝えるべき
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