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世田谷東署落ちこぼれ事件簿
世田谷東署落ちこぼれ事件簿1−1
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思われる男性が一人待っていた。
「どうぞお座りください。お話をうかがいますので」
 空いている応接室に男性を案内して中に入った。
「どうしましたか」
「実は、死んだはずの妻から電話があったんです」
「電話ですか、奥さまから。亡くなられた方とお話しになったのですかー」
「本当なんです」
 男性は純平が話を本気にしていないのだろうと思っている様だ。
「はい、分かってます。奥様とお話しになったのですよね」
「ええー、実際には話してはいないのですが」
「直接お話にはなっていないのですか・・・」
「でも、私のケータイに妻のケータイの番号が登録してあって、電話は妻からだとわかったんです」
「かかってきたのはケータイですね」
「ケータイの着信音が鳴って画面を見ると妻の名前が」
 男性は携帯電話に残っている着信履歴を純平に見せた。
「これです、これ」
 着信履歴データの中にある妻だと言う女名前を指差した。
「何も話されなかったのですか」
「ええ、私が出ると電話が切られたんです。妻の名前を呼んだのですが切れたんです」
「そうですか・・・電話が切れた」
「本当なんです」
 男性は他の警察署に相談に行ったが、話を少し聞いただけで男性の勘違いだろう事件性はないと判断され、まったく取り合ってくれなかったらしい。本当の事だと男性は純平にしつこく何度も言った。

 純平は男性の相談を受け付けて、刑事課に戻り直ぐに報告書にして南田係長に提出した。
「何だよ、まったくしょうがねーなッ」
 純平の報告書を読んだ南田係長は、やっちまったかと苦虫を噛み潰した顔で言った。
「・・・」
「話を聞くだけで何もするなって言っただろう。相談を受け付けちゃって・・・幽霊からの電話かーァ、テレビのワイドショーじゃないんだ、警察で扱う話かよ」
「・・・」
「受理して何にもしないと文句言われるじゃないか、忙しいのにどうするんだ」
「後始末は私がやりますよ」
 刑事課フロアの入口の方から声がした。
「そうだな、山さんに責任とってやってもらおうか」
 外回りから戻って来た山本刑事が二人の所にやって来た。
 純平は、係長の「責任」と言ったその言葉の意味をその時はまだ分からなかった。
「山さんに説明して後始末してもらえ」
 係長が山さんと呼んだ刑事は、刑事課の刑事の中で最古参のベテラン刑事だ。
 山本刑事は純平がまだ交番勤務のお巡りさんだった時から唯一の顔見知りの先輩警官だ。交番の近くで起きた窃盗事件を担当したのが山本刑事だった。その後も何度か純平の交番に立ち寄ってはお茶を飲んで休んでいった。
「プリペード式の携帯電話か、珍しいな」
「それに新しいまだ未使用のプリペードカードも一緒に付けて入れたそうです」
「そうか」
 純平の作成した報告書を
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