第25話「過ちと真実」
[8/8]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
った。
女性徒たちが悲鳴を上げる。
だから、タケルは気付けば大声を出していた。
「ネギ! 修行を思い出せ!!」
「……」
倒れ、地に伏したまま動かないネギに、それでもタケルは声を大にして言う。
「絡操さんの動きはそんなものだったか!? 俺の拳はそんなに軽いか!? エヴァの魔法はそんなに優しいものだったか!?」
気のせいか、ネギがピクリと反応した気がした。
「もう一度言う。修行を思い出せ!」
一度大きく息を吸い込み、そして叫ぶ。
「お前なら……勝てる!!」
ネギは立つ。
恐怖の色は消え、視線は真摯に敵へ。
「はい……タケルさん!!」
こうして今回のタケルのミッションは、彼自身が戦うこともなく終わった。
ヘルマンはネギと小太郎に倒され、彼がもといた世界に還っていった。
傷ついたネギは木乃香によりその傷を癒してもらい、そのまま倒れるように眠ってしまった。
数時間後にはいつも通り、晴れやかな朝が来る。
まだまだ夜の帳が深いこの広場で、ただ一人。疲れてすらいない男がポツンと立ち尽くしていた。
「……」
星が瞬き、月が映えている。
ただ、空を見上げている彼の背後に音もなく一人の少女が降り立った。
「……部屋に帰らないでござるか?」
タケルは驚くこともなく、空を見上げたまま答える。
「ああ」
「いい空でござるなぁ」
あくまでも穏やかにいてくれるのは単なる天然か、それとも彼女なりの気遣いだろうか。
「2つ、決めたことがある」
「……ん?」
「明日になったらネギに謝る」
「……もう一つは?」
目の前の彼女は温かい。
理由も何も尋ねず、ただ淡々と澱みなく話を聞いてくれる。それは確かに、彼女なりの優しさで、タケルはどこかホッとする。
穏やかになる心を自覚しつつ、もう一つの決めていたことを答える。
「俺も、楓みたいにネギを裏から助けようと思う」
「……そうでござるか」
そして、沈黙がお互いを包み込む。
「「……」」
だが、それは気まずいものではなく、むしろ心を落ち着かせてくれる。
空を見上げていた二人が寄り添う。
ゆっくりと、徐々に。
視線はお互いの目を見て離さなくなる。
見詰め合うこと数秒。
「……」
タケルがゆっくりと言う。
「……ありがとう、楓」
そして彼女はいつも通り、こう言うのだ。
「にんにん」
きらきらと星が輝く満天の空の下。
2つの笑顔が優しく咲いていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ