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SAO─戦士達の物語
MR編
百三十二話 その名は絶剣
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のも、アスナの楽しみの一つだった。
其れが息苦しくなったのは、中学に上がったくらいの頃か。

結城の本家が二百年以上前からの両替商、銀行家の名家であると言うのは、以前メンバーには説明した事だ。まぁリョウ等はアスナが入院している間に調べて居たようだったが。

とにかく、まぁそんな家の子供たちと言うのは一様に《良い学校》の《優等生》と呼ばれる人種で、親戚が一堂に会するその席では親達が、ウチの子は何のコンクールで表彰されただの、全国模試が何位だっただのと言う事を表面的には穏やかながら、まぁそれこそ一日中応酬し続けているのである。
まるで子供の順位のつけ直しのようだと、幼いながら明日奈は思ったものだ。

そんな息苦しい年始の挨拶に明日奈が出るのも、2022年以来、実に四年ぶりの事だった。
数年間出ていなかった反動や、今年は明日奈の生還を祝う為の、ある意味自分が主役とも言える場だっただけの事もあるのだろう。
祖父母はじめとするそれこそ無現湧きなのでは有るまいかと思えるような数の親類縁者に挨拶の無限ループを仕掛けられたような、それこそ精神力を限界まで削られる行事では有ったが、それでも親戚や従兄弟に会えると言うのは嬉しい物だ。

従兄弟達は自分の生還をまるでわが事のようによろこんでくれたし、叔父や叔母たちも本気で自分の事を心配してくれていたので、その気持ちはアスナにとってはとても嬉しかった。
そう。嬉しいだけなら良かったのだ。自分の事を、彼等が哀れみ、同情している事が理解できなければ。嬉しいままで、ある意味幸せだっただろうに、明日奈には其れが理解できてしまった。

まぁ、彼等から見ればアスナは、彼等がこれから先延々と歩む人生のレースから、早くも脱落してしまった哀れな少女なのだろう。
別に、そう思う事は彼等の勝手だ。実際、もしSAOを歩む前までの自分があの場にいたら、自分の事を心底哀れみ、これが自分の未来の姿だと言われれば、あるいは絶望したかもしれない。

だが、今となっては、彼等のそんな視線などそよ風のような物でしかないのだ。寧ろ、一様にその価値観しか持てない彼等に、少しばかり違和感すら覚える。
自分は剣士なのだ。誰かに決められ、敷かれたレールの上を人形のように進むのではなく、自らの力で闘い、進む人間である。それは現実へと戻ってきた今でも変わらない。その信念が、明日奈と言う少女の心を支えていた。
其れが親類のだれにも、あるいは、本家に居る間何処かずっと不機嫌だった母にも理解してはもらえない事は、明日奈にもよく分かっていたが……

とにかく、SAO以前の明日奈を強引に進ませていた強迫観念が消えた以上、今は自分の本当にやりたい事を探す事が第一だと明日奈は考えていた。
まぁ、無論最終目標は今は眠りこけている黒衣の少年と現実世界でもこ
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