陽だまりのダークナイト
師匠
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滅ぼす存在だと思えますか?」
リアス・グレモリー。彼女は僕がここに連れてこられてからも、時折この山奥まで様子を見に来てくれていた。
僕のことが心配だったようだが、その頃はまだ僕は彼女の行動に疑念を抱いていたため面会はなるべく避けていた。
いや、心の奥では薄々感じていたのかもしれない。
あの紅髪の少女は悪い悪魔ではない。そう感じていた、だろう。
僕や獣耳の少女、小猫に向けられる笑顔には、悪意も他意も微塵に感じ取れなかった。
それどころか、あの日女性天使たちから向けられた優しさと同質のものさえ、彼女の笑顔から感じられた。
「……わからない」
それが僕の精一杯の答えだ。
種族が違う、価値観が違う、力が違う。種族が変われば価値観も変わるだろう。価値観が違えば、人間をどう見ているのかだなんてこちらからは理解できない。
ペットのような感覚かとも考えた。人間でも動物に愛情を注ぐ者は多い。
だが、種族が突然変わったとしても価値観はそう簡単には変らないと思う。いや、種族が変われば人間を異種族として認識できるのかもしれない。考えれば、僕はあの日から一度も人間と会っていない。
悩む僕を見て、師匠は小さく笑う。子供の悩みを愉快に楽しむように。
「色々なものを見てお考えなさい。少なくとも、あなたにはその選択肢が与えられたのですから。それはとても素敵なことなのですよ?考えることも与えられない者がこの世にどれだけいるのか……」
師匠の言うことに、僕はただ疑問と予想しか浮かべられなかった。
それから師匠は僕に様々な楽しみ方を教えてくれた。
釣りだけではなく、料理、手芸、カルタ、独楽、短歌。
日本の文字も教えてくれた。まあ前世の記憶があるので知識自体は問題ない。技術は継承されていないので、その刷り合わせをしているような気分だった。
決まって、師匠が僕に何かを教えてくれるのは陽光の下でだった。
悪魔なのに、おかしくも貴重な時間だった。
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