陽だまりのダークナイト
師匠
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ともに会話をするようになっていた。
共に川で釣りをしている時のこと。
ぽかぽかとした陽気の中、釣りをしながら会話をするのが常となっていた。
「悪魔は嫌ですか?」
師匠が不意に訊いてきた。
僕は顔を難しくして答える。
「悪魔は人間の敵、人間を滅ぼす存在。……そう教えられた」
あの研究所で習ったことは、強く刷り込まれていた。
同じ神を信じていた研究者に裏切られようとも、僕に優しくしてくれた女性天使達の笑顔は本物だと信じているからこそ、信じていたいからこそ、教え込まれた知識を捨てきれない。
もちろん前世の記憶による先入観もある。だけど、今の僕を構成するものの中で一番の比重を占めるのは研究所での日々だった。
師匠は軽く笑う。
「そうですね。天界―――教会から見れば悪魔は敵対勢力です。しかし、それが全てと言うわけではありません」
「じゃあ、悪魔は人間の、味方?」
僕の問いに、師匠は首を縦にも横にも振らなかった。ただ笑みを浮かべるだけだ。
「悪魔にとって人間はなくてはならない存在です。古の時代から契約の対価をもらうことで悪魔は存在してきましたからね。ギブアンドテイク。悪魔の基本原理です。まあ、中に人間を騙したりする悪魔もいますが、逆に人間も悪魔を騙して利益を得たりもします。お互い様ですね」
なるほど、と思った。
前世の記憶の中にある小説にも、悪魔と人間が契約と言う場において互いを騙し合う描写があった。そして、悪魔は契約を破らない。
「悪魔は人間の弱みに付け込む邪悪な存在だと教えられた」
「邪悪……なるほど」
邪悪と言う言葉に師匠は目を細める。
「……本当の邪悪と言うものは、もっとどうしようもないものを言うのですよ。……今のあなたにそれを言ってもわからないかもしれませんね」
どうしようもないほどの邪悪。そう言われて頭の中に思い浮かんだのは、小説などの創作に登場する生粋の悪役達だった。
悪役の中には己の信念を持って戦う者もいた。だが、己の快楽や破壊衝動、憎悪や憤怒、欲望に身を任せて暴れる者もいた。
そんな者達が、この世界には実在するのだろうか?
異能や異形が存在するのだから、案外数え切れないほど存在するのかもしれない。お話によっては化け物だけではなく、人間や、果ては神さえにもそう言った存在がいるのだから。
邪神、魔神、悪神と呼ばれるような神はそれ入るのだろうか?だが、悪魔は種族としての名前に『悪』の文字があるのに師匠は邪悪ではない、そんな風に言っているように感じられる。
なんてどんどん考えを巡らせていってしまう。
師匠はそんな風に考え込む僕を見ながら、魚を一匹釣り上げて更に問うて来た。
「では、少年。悪魔は人間を滅ぼす存在だと思えますか?例えば私やリアス姫が人間を
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