陽だまりのダークナイト
師匠
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いるからだ。
と言っても、記憶の中では剣道は小学生、空手は中学生の頃に習っていただけだ。前世の記憶の中でも遠い記憶である。
そもそも前世の記憶は欠落している部分が多々あることは時間を掛けて確認している。遠い記憶になればなるほど朧気で、失われているところが多い。
どうも前世の僕はそこそこ運動神経がよかったらしい。様々なスポーツに手を出している辺り飽き性だったのかもしれないが。
前世の技術は継承されていないのだからどうでもいいことだ。
沖田は壁にかけられた木刀を二振り取り、片方を道場を見渡していた僕に放った。
慌てて木刀をキャッチする僕を見て、沖田総司は木刀を構えた。
「さあ、打ち込んできなさい」
その言動と行動を怪訝に思った僕は、つい訊いてしまった。
「……ここに連れてきてどうするつもりだ」
沖田総司は笑んだ。
「あなたの今の立場がどうあれ、あなたが強烈な憎悪、復讐心を抱いているのは顔を見ていればわかります。それが心中を支配しているのでしょう?」
自分ではなるべく無表情を取り繕い冷静でいるつもりだったが、どうやら看破されているらしい。
沖田総司は続けた。
「復讐を果たすにもその腕前では、不足も不足。返り討ちにあって当然でしょう。どうですか?悪魔に転生したことも、リアス姫のことも忘れて、まずは強くなって見ませんか?強くならなければ復讐も何もできませんよ?」
―――気付けば、僕は木刀を構えて沖田総司に向かっていた。
「はぁぁぁぁっ!」
碌な構えもなっていない、雑な突貫。剣の持ち方すら、僕は覚えがなかったのだ。前世の記憶にある剣道の記憶を見よう見真似でやるしかない。
それでも、沖田総司は僕の一撃一撃を、真正面から受けてくれた。
木刀の一撃によって心の中が晴れ渡っていくようで、僕はただただ夢中になって木刀を振り続けた。
―○●○―
「いいですか。剣を振るうのに必要なのは筋力よりも、いかに的確に相手の隙を突くかです。そう言う意味で技術を鍛えた方がいいのですよ」
沖田総司、師匠は木刀を振るう僕に真摯になって手解きをしてくれた。
師匠は自身が使う天然理心流はこれと言って教えてくれず、僕に合った剣術を見出してくれた。
僕が師匠から剣で習ったのは、その精神と心構え、戦闘への姿勢のみだ。あとは自己の判断で剣を振るうように仕込まれた。
師匠に剣を習い始めて一月が経過した。僕はその間、一度たりとも山を抜け出そうとは思わなかった。
自分が強くなることが、何よりも生きる糧となり、意義となっていたからだ。
強くなければ復讐もできない。ならば、まずは力を求めよう。
僕はいつの間にか、師匠に心を開いていた。上の者へと言葉遣いはなっていなかったが、師匠とだけはま
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