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フェアリーテイルの終わり方
九幕 湖畔のコントラスト
13幕
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 ジュード自身の未来である〈彼〉は、無言で肯いた。

『そっちのローエンの言う通り、僕らもルドガーと〈エル〉と一緒に旅をした。でも僕たちは、〈エル〉を……犠牲にした。しかもその後でココが分史世界だと分かって……僕らの歯車は狂い始めた」

 当時を思い出してか、〈彼〉の目が遠いものを見るそれになった。

『ルドガーはラルさんとの間に産まれた娘に〈エル〉の名前を付けて。あの子も育っていくにつれて〈エル〉に似ていった。その時は僕も単に、彼は死んだ〈エル〉の分も自分の子には生きてほしいんだろうって。似てるのだって、彼女たちの生い立ちを考えたら当然だからって思ってた』
「この世界の僕らがヴィクトルさんに殺されたのには、エルが関係してるんですか?」

 〈彼〉は痛ましさを浮かべたまま肯いた。

『僕らがエルを〈ルドガー〉から無理やり奪おうとしたから』
「奪う?」
『エルは〈鍵〉だった。〈クルスニクの鍵〉。〈ルドガー〉の周りは、エルを利用して現状をどうにかしようとした人たちばっかりだった。僕も、その一人。やっと製品化にこぎつけた源霊匣(オリジン)の生産をビズリーに握られて。死んだ今となっては情けないの一言だよ。親友一人助けられない奴が、人と精霊の共存なんて叶えられるわけないのに』

 〈彼〉の掌がフェイの頬に添えられる。フェイが動けば髪が揺らめいて気泡が立つのに、〈彼〉の挙動では泡は立たない。

『大事なもの、どうして大事かを忘れて、囚われてた。僕もルドガーと同じだ。そのためにこの子を利用した。僕が霊力野(ゲート)を開いたせいでこの子を本当に辛い目に遭わせてしまった』
「分かるんですか。フェイが正史世界でどうしていたか」
『いいや。でも、この子の姿を見れば想像はつく。ラルさん譲りの蜂蜜色の髪と紫の目だったのに……ごめんね、フェイリオ。僕がよけいな真似したばっかりに』

 フェイは首を横に振って、〈彼〉の掌に手を重ねた。

「わたしはいいの。イタイオモイもイッパイしたけど、またお姉ちゃんと会えた。やさしいパパにも会った。これから〈あなた〉になる人とも、会えたから」

 〈彼〉は憐れみを湛えてフェイを抱擁した。フェイはそっと〈彼〉の胸板に体を預けている。

『正直不安だった。いつもルドガーに辛く当たられて、泣きもしないで蹲ってた小さな君。ずっと見てきた。見守るしかできなかった。でも――強くなったね、フェイリオ。正史でたくさん頑張ったんだね。よかった。本当によかった』

 〈彼〉は、泣いているのかもしれない。水中のここでは分からないことだが。

 やがて〈彼〉はフェイを離すと、ジュードをまっすぐ見据えてきた。

『身勝手な頼みだって分かってる。でも死んでしまった僕には何もできない。どうか、お願いだ。彼を……僕の
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