九幕 湖畔のコントラスト
11幕
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
(お姉ちゃんがわたしのお姉ちゃんである限り、この世のどんなことも怖くない)
エルと存分に抱き合って、ぬくもりを体中に刻んで、勇気をフルスロットルに。
フェイはエルから離れてヴィクトルの前に出た。およそ父親のものではない、尖った眼光がフェイを射抜く。
「パパがフェイをキライなのは知ってた。イラナイ子だってのもよく分かってた。でも、考えたの。パパがわたしをどう想ってるかで、わたしのパパへのキモチは変わるの? って。――変わらなかった。わたしはやっぱり、どうしてもパパがスキで、パパにスキになってもらいたかった」
冷たくて、無関心。フェイをずっといないものと扱ってきた父親。
(それでも、よ。お姉ちゃんみたいに、わたしも自分の力で立てるようになりたいから)
ヴィクトルの腕で届くか届かないかギリギリの位置まで行き、フェイは左手を差し出した。
「わたしはパパと手を取り合いたい。パパの願いを叶えたい。ルドガーが死ななきゃ正史世界に行けないのも、お姉ちゃんの思い出が最初からやり直しになっちゃうのも、わたしが何とかしてみせる。これがわたしにできること。今のわたしに思いつくこと。フェイがパパの娘だから、言えるの。パパ、もうやめて。お願い。ルドガーとお姉ちゃんをこれ以上傷つけないで。パパもこれ以上傷つかないで」
フェイは震えを堪えてヴィクトルに差し伸べる手を維持した。
叶うなら取ってほしい、でもきっとヴィクトルは取るまい――と、暗い未来を想像しかける自分を叱り飛ばす。
ガイアスはできることを考えろと言った。マクスウェルのミラは、甘えるなと言った。
今のこれは、フェイなりに努力してきたものの集大成。
あとはヴィクトルがその手を取るかだけ。
「ふざけるな」
バチィ…イン!!
ヴィクトルは手加減なく、フェイの伸べた左手を叩き返した。
傷が開く。白い包帯に赤が滲んでいく。フェイはとっさに右手で左手を押さえ、きゅっと目を閉じた。
再び目を開けた時には、正面にいた父は、剣を振り被っていて。
ああ、死ぬんだ、と頭のどこかが冷静に思った。
フェイが動けないでいると、反対側からジュードが駆けてきた。背後からの奇襲狙いで拳を脇に撓めてヴィクトルに飛びかかる。
フェイには分かる。ジュードの攻撃は当たらない。ヴィクトルが気づいてしまった。
「イヤ……ジュードぉ!!」
風と土を駆使して転位同然の速さでジュードとヴィクトルの間に割り込む。当然の帰結として、フェイはその背にヴィクトルが振り抜いた斬撃を受けた。
「フェイぃっっ!!」
斬撃の衝撃で、フェイの体はジュードにぶつかり、ジュードはそれを受け止めようとして。
二人ともが湖へ吹き飛ばされ、水没
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ