第一章 〜囚われの少女〜
行方
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いた。
しかし、ジュリエッタはすべてを失った。残された者を襲う、言いようのない喪失感。
「ああ、せめて……。
せめて私をさらっていって……」
何処にも届くことのない、祈りとも言えないような言葉を呟くのだった。
エリオが携えていた剣で、自らの胸を貫く。
ジュリエッタはエリオに寄り添いながら旅立っていった。
エリオとジュリエッタ、二人とも穏やかな表情をしていたのだという。
――惨劇の結末は、悲劇によって幕を閉じた。
それから歳月は経ち、他国の若き王子が新たな王となった。
そうして国は、平安を取り戻したのだという。
終幕。
「――物語はこれでおしまい。エリオとジュリエッタ。痛みもなく、傷一つない最期だったのだという……」
薄汚れたローブを身に纏った、怪しい人物による最後のモノローグ。
「歯車と歯車が噛み合うように人々は出会い、物語は動き始める。この物語の悲劇の始まりは、一体いつだったのだろう……」
舞台の上を端から端へ、うろうろと何度も往復する。
「しかし気づく事が出来たのは、その悲劇に巻き込まれなかった私たち傍観者。いや……悪なる感情に飲み込まれず、最善の手を尽くす事が出来ていたら……。この惨劇は回避できたのか、それともできなかったのか。二人は最後に幸せになれたのか……それは皆様のご想像にお任せするとしよう……」
そしてぶつぶつと呟くと、そのまま舞台の袖に消えていった。
――
幕は下り、カーテンコールの拍手が、嵐のように会場に沸き起こる。
再び幕があがる頃には、キャストのすべてが肩を並べていた。
役者を務めた皆は観客に向かい、そのなかで誇らしげにお辞儀をした。
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