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第一章 〜囚われの少女〜
行方
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、一直線におちてゆく。
 その体と地面がぶつかるより早く、ジュリエッタを受け止めたのは――
「ジュリエッタ様……すべては私が……間違っておりました。私はなんと愚かな事を……」
「ああ……。ああ……、エリオなの。助けてくれたのね。私を思い出してくれたのね」

 切り取られたように闇色の空は裂けてゆき、そこからは晴れ間が広がった。雲一つなく澄み渡った、水のような色の空。
 しかしそこに在ったのは、暗黒色の悪なる騎士だった。本来の人間らしい声を取り戻したエリオ。しかし姿はそのまま、邪悪な色のままだった。

 ジュリエッタはエリオの姿を気にも留めず、昂ぶるそのままの想いをぶつける。
「ああ……再びこうして、あなたと会話ができることを。どれほど思い焦がれたことでしょう!」
 だがエリオは、邪悪な姿のまま俯く。
「私も……再びこうしてジュリエッタ様にお会いできるとは……。これは神の御慈悲なのでしょうか? しかし……私の罪は消える事は有りません」
 ジュリエッタは、エリオが背負ってしまった運命を理解した。
 先ほどまでの昂ぶりは、悲哀に満ちた嘆きに変わる。
「ああ……エリオ、どうして。どうしてこんな事に」
 エリオはもう、この国では生きてゆけない。国を滅亡へと追い込み、この国で殺戮を起こした。大罪を犯した大悪人として、極刑となるだろう。

「最期にこうして、あなた様と出会えたことに感謝いたします」
 エリオは全てを悟ったように儚く、柔らかに微笑んだ。
「エリオ、私の愛しい人……。せっかくまた会えたというのに、どうして? どうして……」
 その瞳には、この空のように透明な水が湛えられていた。
 それが溢れるのに、時間は要さなかった。ジュリエッタはまるで子供が泣きじゃくるかのように泣いた。素直に、どこまでもわがままに。
「あなたと離れるのは……もう、いやなの。もう……どこへも行かないで。ずっとそばにいて、また私をこうして守って……」
 エリオの胸を濡らしながら、そこにしがみつく。
「姿は見えなくとも、私はあなたのそばにいます。いつでもあなたとともに。いつまでもずっと、あなたを見守っています」
 エリオは優しく微笑んだまま。ジュリエッタをゆっくりと離す。
 そしてその瞳を真っ直ぐ見つめる。
「籠の中に閉じ込められていた、囚われのあなたはもう、どこにもいません。ジュリエッタ様、あなたをお慕いしております。あなた様らしく、どうかお幸せに――」
 宙を漂っていた、聖なる騎士はその白槍をエリオへと向けた。
 ジュリエッタの目が大きく見開かれたのと、槍が黒の甲冑を貫いたのは、ほぼ同時だった。
 倒れるエリオ。
 エリオの闇は晴れた。塵となり、大気にばら撒かれて消えてゆく。
 すでに息のないエリオは、人間としての姿を取り戻して
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