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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十五 決着
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ち、一言告げる。
「チャクラを使えずとも、闘う方法はいくらだってある」
区切られた壁の一角。安全地帯からわざわざ降りてきたナルトを、神農は歓迎の体で迎えた。
「めでたい奴だ。チャクラを封じられた人間など蟻と同じ。虫けら風情に何が出来る!?―――見よ!!」
薄笑いを浮かべる。待ち兼ねたとばかりに彼は両腕を大きく広げた。

途端、繭から幾重もの触手が伸びてくる。それらは神農の周囲を取り巻き、その身体に絡みついた。光の雪崩。白金を帯びた触手は光の輪の中へ彼を誘う。

男の全身が零尾に食い込まれていくのを、重厚な壁の内側で香燐は固唾を呑んで見守っていた。白い光の底からにったりと笑う神農。満足げな顔つきで消えていく彼をナルトは静かに見送った。

異形なモノに組み込まれるのを甘んじて受ける。むしろ望んでいるのだろう。神農の眼が狂気染みた輝きを放っている事に、ナルトはとうに気づいていた。








ソレは酷く落ちつかなかった。

まどろみの中。夢見心地で見えたぼんやりと浮かぶ人の姿に、ソレは大いに関心を抱いた。今まで目にしていた人間は己を従える男しかいなかったからだ。突然見知らぬ地に口寄せされ、服従させられた。訳の解らぬまま心の闇を喰らい、闇のチャクラを生み出し続ける。抗い難い支配と束縛。
次第にはっきりとしてきた意識に相俟ってソレは少年の輪郭を視界に捉えた。
瞬間、雷を打たれたような衝撃をその身に受ける。待ち侘びた存在。夢現に感じていた人物が、今、目の前にいる。
ソレは彼に向かって在りもしない手を伸ばす。だがその身を包む真綿の如き檻がそれを良しとしなかった。見た目柔らかく脆い繭は、ソレの行く手を阻む堅固な壁。そして背後に聳える石盤は身体の自由を奪う枷だった。
不意に、耳障りな声がした。自らの手綱を握る人間が真下で何事か喚いている。嫌な予感がし、ソレは身を捩った。だが意思に反して繭から脱け出す触手。嫌悪感に苛まされながら、力を与える。
そして己を従える男に、零尾はその身を明け渡した。








喜怒哀楽といった感情の窺えぬ、零尾の仮面。それは神農が同化した途端、表情を露にした。
どこか人を食ったような笑みは神農の面影をくっきり残している。

光を放つ繭をナルトはじっと見上げていた。
仰望も恐怖も驚愕すらもない。涼しげな顔でこちらを見据えるナルトの態度に、神農は苛立った。自身の予想を尽く裏切るこの少年が憎たらしくて堪らない。だが怒りを押し殺し、彼は低い声で「圧倒的力の前では全てが無意味。大体、人が尾獣に勝てると思うのか!!」と嘲った。
「そうかな? 象とて時に蟻に刺し殺される。馬鹿にしないほうがいい」
神農の断言を遠回しだが否定するナルト。あからさまな挑発に、神農の怒りが爆発した。
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