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久遠の神話
第八十九話 六人目への介入その五

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「戦闘快楽者よ」
「つまりですね」
 豊香は智子のその言葉を受けて言った。
「彼はアーレス神の流れにありますね」
「そうよ、彼もね」
 智子は今度はアーレスの話をした、ギリシア神話において彼女と同じ戦いの神である。そうした意味では彼女と同じだ。
 しかし智子はアーレスについてはいささか不快な顔でだ、こう二人に言った。
「彼は戦い、そしてその中での殺戮と破壊だけを好んでいるわね」
「そこがお姉様と違いますね」
 豊香もこう言って智子に同意した。
「あの方は」
「ええ、私はむしろね」
「むしろですね」
「ヘパイストス兄様の方が好きで」
 そしてだというのだ。
「彼はね」
「どうしてもですね」
「好きではないわ、性格的に違い過ぎるから」
 だからだというのだ。
「殺伐として暴れたいだけというのは」
「お姉様とは全く違いますね」
「だからね」
 それでだというのだ。
「私は彼は好きではないのよ」
「お姉様は戦いの女神ですが智略ですね」
「ええ、そして戦いもね」
 それ自体の考え方もだった、智子のそれは。
「出来れば避けたいわ」
「智略を使われても」
「戦いでは無駄な命が失われる、ないに越したことはないわ」
 戦いの女神であっても血を好まない智子らしい言葉だった、彼女にとって戦いとはそうしたものであるのだ。
 何故かだ、それはというと。
「私は技術、智も司っているからこそ」
「戦いだけではないですから」
「そうよ、だからね」
 それでだというのだ。
「私は戦いの女神であってもそれは最後であり血よりも智を好むわ」
「そうですね」
「そう考えているわ、けれど」
「魔の剣士はですか」
「彼はアーレス神とはまた違うわ」
 彼とはだというのだ、加藤は。
「戦いを好んでいても破壊や血を躊躇しなくとも」
「それでもですね」
「彼には智略があるわ」
 智子が重く見ているそれがだというのだ。
「そして戦わない相手には何もしないわ」
「破壊や流血を躊躇せずとも」
「そこがアーレス神とは違うのですね」
「暴力はないわ」
 戦いは好んでもだというのだ。
「言うならば野獣よ、しかも卑しくない」
「確かに。あの人は卑しくないですね」
 今度は聡美が言う。
「決して」
「今の時代の剣士達は誰もがね」
「はい、卑しくはないです」
 その心がというのだ。
「そうした人は誰もいません」
「卑しい人間はね」
 智子もいささか否定的に話す、そうした輩は神話の頃からいて消えることはないからだ。無論この時代の日本でもだ。
「いるけれど」
「しかし十三人の剣士達は」
「誰もそうではないわね」
「このことはいいことですね」
「ええ、そしてそれは魔の剣士もよ」
 彼もだというのだ。
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