第八十九話 六人目への介入その二
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「ではあの人のことを今以上に」
「念入りに調べましょう」
「そうしてどうするべきか」
まさに相手を知ってだ、それからだというのだ。
「考えていきましょう」
「わかりました、それでは」
「まずは」
二人は智子の言葉に再び頷いた、そうしてだった、
三人はコズイレフのことを調べはじめた、これまで三人が彼について知っていることよりもさらにそうしたのだ。
それからだ、三人でまた合流してだった。
まずは智子がだ、微笑んでこう言った。
「これだけの幸せな家庭ならね」
「絶対にですね」
「壊れて欲しくないと思うものですね」
聡美と豊香もその智子に応える。
「それで戦いを決意されることも」
「当然ですね」
「ええ、ただね」
ここでだ、智子は冷静に言った。
「これ位固い絆なら」
「家族の絆がですね」
「固いと」
「壊れないな」
こう言うのだった。
「例え何が起ころうともね」
「戦争や災害でもですね」
「絆はこれ以上はないまでに脆いわ」
智子は聡美に応えながら絆の話もした。
「このことは紛れもない事実よ」
「人の心と心の結びつきは」
「確かに脆いわ。簡単に壊れてしまうものよ」
「そうですね。神話の頃より」
「妬み、疑い、恨み、憎しみ」
智子はそうした感情を挙げていく、人間ならば誰もが必ず持っているそうした感情を。
「それは誰にもあるわ」
「まさにですね」
「そうした負の感情は」
聡美だけでなく智子も応えて言って来る。
「我々神々にも」
「どうしても」
「勿論私にもあるわ」
他ならぬ智子自身にもだ、そうした感情は存在しているというのだ。
「それが為にエリニュス達に付け込まれるのよ」
「不和から争いを引き起こす彼女達に」
「そうなりますね」
「心がある存在には必ずあるわ」
そうした感情はというのだ。
「どうしてもね」
「そうですね、トロイア戦争といい」
聡美はここでは智子を見た、そのうえでの言葉だった。
「あの時もそうでしたね」
「私はあの時ね」
智子は彼女には珍しい顔になった、過去を思い出し自嘲する笑みだった。その顔を見せてこう言ったのである。
「感情により我を忘れたわ」
「争いを起こす素になってしまったと」
「ええ、敬愛している筈のヘラ義母様そして親友でもある筈のアフロディーテ女神と争い」
そしてだったというのだ。
「トロイアとギリシアを争わせてしまったわ」
「そうでしたね」
「そして貴女ともね」
智子は聡美も見て言った、現在の彼女と過去の彼女を。
「私はギリシアを助け」
「私はトロイアを助けました」
「神にも感情があるが故に」
「負の感情もあります」
「それは誰にもあるものだから」
例え家族同士であってもだ。
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