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乱世の確率事象改変
彼と並び立つモノ
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の被害が全くない敵兵右左翼は困惑しながらも突撃してきているというのに、包囲されるのも気にせず、槍を投げた前半分の徐晃隊は腰の剣を引き抜いて、投げていない後列は槍を持ったまま、愛馬である月光と共に駆ける彼を先頭として敵の中央に突っ込んで行く。
 武器を投げる等と異常な事を行った兵を見て唯でさえ浮足立っている状態で、そこに来る圧倒的な武力によって袁術軍中央は乱れる他なく、戦場には紅の華が次々と咲き誇った。
 先頭を貫いていく彼が剣を振る度に鮮血が舞い、殺そうと武器を振るっても悉くが弾かれ、一方的な攻撃を受ける事によって近くの兵から恐怖に引きずり込まれていく。
 自分からこの大多数の兵の中央に、しかも将自ら突貫してくる等と……そのような命を顧みない異常な行動に敵の誰しもが瞬時に怯えを植え付けられた。
 初戦、しかも別働隊が来る事が分かっているはず、さらには味方もまだまだいるはずなのに命を投げ捨てるかのような行動をされて……敵将たる少女の心は乱れに乱れた。
 迷いは兵に伝播する。そして恐怖の心を助長していく。常人の思考を持つ少女は立て直す為に何をしようとするか。

「ぜ、全包囲では無く、半包囲を行え! 決して抜かれるな!」

 守勢による持久戦術を取るのは必然。数が多いのならばじっくりと時間を掛けながら統率を確立し直せばいいだけ。混乱の渦に呑まれ切る前にそれを行った事は評価出来る。しかし……徐晃隊に対しては間違い。
 突如、敵の包囲が変わり始めると同時に徐晃隊後方から笛の音が鳴り響く。木霊するように長く多くなっていくそれは各小隊長が鳴らしていた。
 一つ一つ音色の違うその音は、小隊毎への指示の証。
 シ水関で見せた参列突撃戦術が袁術軍の両翼を広げるように襲い始めた。
 乱戦であれば数が多い方が有利なのは確実だろう。だが、統率された兵列によって面としてぶつかり合うのならば、練度と連携の勝る方が有利なのは言うまでも無い。
 秋斗の命令は中央を食い破れ。ならば彼ら徐晃隊はそれに従って独自で対応を行う。秋斗はそれが出来る隊に仕上げてきた。
 徐晃隊は死を恐れる事は無い。彼の為に、彼の作り出す世界の為にと信じる心は力となり、隣で戦友が倒れようとも、自身に刃を向けられようとも命令を遂行する事だけが彼らの全てとなる。
 もはや黒麒麟の独壇場となった戦場で、一人の年若い将は寡兵に真正面から圧されているという事実を受けて、限定され始めた思考の中で愚かにも一つの指示を出してしまった。

「鶴翼陣に切り替えろ! 敵を引き込んでやればいい! 圧倒的な兵数で挟撃すればよいのだ! まずは兵の数を減らせ!」

 言葉と同時に彼女自身も右翼に動き始める。ばらばらと恐怖のままに動く軍は被害を増やしながらも徐々に下がっていくが、

「全軍、退却」

 あ
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