本編 第一部
三章 「戦火の暗殺者」
第二十話「呪いと剣と魔法と」
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
でこちらも意識を削り取られるようにガンガンと頭に響いてくる。
「ふう、だけどこの化け物、ちょっと厄介。豊村さん、霊媒になってる生徒がこの化け物に恐ろしい力を与えている。私がこいつを押さえ込んでいるから生徒を助け出して」
「細川さんっ、加勢する、やああああ!」
友恵が、真剣を抜き放ち、飛び上がって、化け物にするどい一閃を浴びせる。するとまるで骸骨のなかに充満していた紫色のガスが爆発したように骸骨の反面を吹き飛ばす。友恵は上手く着地して、刀を返して化け物の様子を見る。
その時、スプリンクラーが作動した。噴水のように巻き上げられた水が地面を濡らす。
「な、なんだ?地面から水?」魔術師があわてているようだ。
「まあ、スプリンクラーを知らないの?クスクス。貧しい国の出身なのね。さっきちょっとここにくるまえにあらかじめ手を打っといたの。あなた、呪術師としては一流だけど少し仕事が雑ね。ちょっと力のあるものが窓からみれば、大体、どんな呪いを張ってるか一目瞭然でしてよ?ねえ、田舎者さん?豊村さんの相手をするのには少しマナーがなっていなくてよ。友恵ちゃん、大丈夫、もうこんな奴わたしの敵ではないから」
いつものような、けなげなところのない、冷笑を浮かべる細川さんは、いよいよ、その呪文の声を上げて唱え始める。音の抑揚が校庭に木霊し、空に雷雲を呼び込んで、ものすごい嵐を引き起こす。稲妻が、立て続けに落ち、化け物に当たって霧は湯気を上げて掻き消えてゆく。
細川さんは、体から魔力を放出して青い光に包まれ、その影は大きく伸びて校舎を覆いつくすようだ。目は爛々と金色に輝きはじめ、呪文を唱える口からは火さえもがもれている。どんどん細川さんの声は力をあらわにしていく。
そして、霧は空中でいくつかの水滴になって、空にまるで逆向きの降る天邪鬼な雨となって空に舞い上がっていった。
すると、ふとした瞬間には、細川さんも校庭もまるで何事もなかったようにいつもの晴れた夏に戻っていた。それどころか生徒たちも何事もなかったように部活動をしている。
生徒たちの元気に部活をする声で校庭はいっぱいになった。
細川さんの、威容は影も形もなくなっていつものはかなげな文学少女にもどっていた。ガクッと膝を落として力なくうなだれた。どうやら霧の化け物は死んだようだ。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ