本編 第一部
三章 「戦火の暗殺者」
第十八話「友恵、参戦!」
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二人の剣道の試合があまりに見事すぎておれは、ついいうべきことを忘れてしまっていた。
「やあ、見事だった。友恵、あらためて友恵のことを尊敬するよ。これからもよろしくな」
「は、はい!こ、こちらこそ。私、伊佐さんのことが憧れるというより好きになりました。不思議ですね。わたし、伊佐さんを見て思いました。はじめは憧れていただけで伊佐さんのことどこか遠い国の英雄のように思ってました。それが初めてあいさつを交わしたあの時から、伊佐さんとの距離がどんどん縮まって。すごいです。今は私も伊佐さんと同じ豪傑のようになって伊佐さんと肩を並べて心を共有してる。本当に友達になれて光栄です」
「わたしも、友恵もみんなも友達になれて光栄だ。わたしは、少し世間を見くびっていたようだ。こんなにすばらしい人たちがわたしのすぐ隣にいたなんて、いや、そうじゃないな。友恵も友恵の剣道部の人たちも、この学校のクラスの人もこの学校の全ての人も、それからこの町の人もこの世界のどんな人も、みんな、すばらしいんだな。気づかなかったよ」
「伊佐さん、わたしは、剣道部の顧問の前島です。この学校の歴史に残る名勝負。とくと見せてもらいました。伊佐さん、あなたは、なるほどたしかにさっき友恵が言ったように神懸かったところがあります。そしてそのあなたの巨大なまでの底知れなさ。ですが覚えておいてください。人は、一人では、やはり弱いのです。自分の力を誇って他人を認めない人間は、武術の歴史でいつも悲惨な目に合ってきたのです。どのような武術の達人でも一番、恐ろしい敵は、自分の中にある鬼なのです。強さにおぼれず、人として本当の道をどうか進んでください」
「前島師範……。お言葉、肝に銘じておきます、剣道部のみなさん。どうもありがとう!」
剣道部員みんなが自然とだれかからか拍手が上がって、すぐにこの道場いっぱいにみんなの拍手でいっぱいになった」
賢治も静かに笑みがこぼれた。
「よかった」
「ん?なんや賢ちゃん、えらいほっとしたような顔してるで?」
「いや、そうだな、島。おまえにだけは言っておくよ。あの豊村はな、これからまるでそう決められてたようになにか危険なことに巻き込まれる。その時、俺は命を張ってあいつを守ろうと思った。だけどはたして俺だけでその役が務まるかと思ったが、よかったこれで少なくともあいつを大事におもってくれる奴が四人はいるんだ。だからそうだな、ほっとした」
「賢ちゃん、豊村はんだけやないで、一人じゃなくなったのは」
「うん?」
「わてもここにいるやないか、水臭いでー、賢ちゃん!」
島は、自分に親指をたてて、豪快に笑った。
「高ちゃん、あんがとな」
「あー、泣くな泣くな、いい男が台無しや」
「先生―!前島先生!あの柔道部のものなんですけどー男子がランニングいったきり帰ってきません」
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