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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
相対性
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く。
しかし――――
「ハシャぐなヨ、
小僧
(
ガキ
)
どもガ」
それを遥か彼方に置き去りにするほどの凄絶な
圧力
(
プレッシャー
)
が小柄な身体から放たれ、闇全てを遠ざける。
くりくりとしたアルゴの眼が、耐え難いナニカが含まれたモノに変わる。
「言っとくが、《心意》の力に気付いているのが《
六王
(
じぶんたち
)
》だけだとは思うなヨ」
びり、びり、と空間自体が共振しているかのように揺れる。
《心意》の力の前では、《圏内》と《圏外》の違いなど瑣末なものと成り果てる。その先に待つのは血生臭いコロシアイだ。
もう少し、本当に小石が落ちるくらいの音域が響き渡れば、ここがどこだろうが関係なく戦闘にもつれ込む寸前。
「やめい」
しわがれた声が響いた瞬間、先程までの殺気が嘘のように消え失せる。
遠くに行っていたBGMと人々の喧騒が戻ってきて耳朶を打つ。血色に染まりかかっていた視界は、元の色を取り戻してきていた。
「…………すまんのぅ、どうも血の気がある奴が多くていかん」
「フン、二度とは言わんゾ。失せロ」
ピリピリとした苛立ちすらも遥かに通り越し、もう半ば怒気すらも放っている《鼠》のアルゴに対し、闇の底から申し訳なさそうな声が返ってきた。
「すまんのぅ、アルゴちゃん」
「さっさと失せろっつってんだろうが、クソジジイ」
威圧するその声とともに、ずっと空間を覆っていた圧迫感が消え失せた。視界内のあらゆる影からこちらを見ていた闇が、音もなくスッと掻き消える。大気が透き通り、肌を突き刺すように感じられる。
街どおりを歩くNPCすらも、急にその数を増したように感じられ、喧騒もまた一段と鼓膜を震わせた。ざわざわ、ざわざわ、と草木が震えるような音が空気を震わせる。
影から完全に闇が去ったのを知覚し、やっと金褐色の巻き毛を持つ少女はホッと方から力を抜かすことができた。小柄な身体を薄く包んでいた過剰光が、ゆらりと空気に溶け込むように掻き消える。
心の底、魂が丸ごと抜け出るほどのため息をつき、少女は半ば独り言のように口を開く。
「…………やっぱり、見た目だけ整えても限界があるかナ。あのジジイにはバレてたみたいだシ」
手をグーパーさせながら、《鼠》は一人愚痴る。
「あーあ、いつの間にオレっちは鼠以下の蛆虫に落ちちまったんダ?」
己を嘲るように、自嘲するように、言う。
「レン…………、助けてくれヨ」
嘆く少女の心の叫びに応える少年は、当然ながらここにはいない。彼は今、戦場に向かっていることだろう。”自分が仕向けた”、コロシアイの戦場に。
少女は嘆く。
己がした事に。
鼠は鳴く。
チューチュー、と。
悲しそうに。
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