第五十六話 鼠の穴その九
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「後でくるから」
「寝ないとね」
「そうそう、長時間起きているっていうことだけでね」
まさにそれだけでだ。
「身体をいじめてるんだよ」
「本当に寝ないと駄目よね」
「徹夜とかは厳禁よね」
「私達もそう思ってるからね」
「寝る様にはしてるのよ」
人間の基準でだというのだ。
そうした話をしつつだった、一行は小動物こコーナーに着いた、そうしてだった。
鉄鼠は二人に部屋の中にある脚立を指し示してこう言った。
「あれだよ」
「もう用意してくれてるのね」
「それじゃあ後は」
「そう、脚立を昇ってね」
そうしてだというのだ。
「泉かどうか確かめてね」
「ええ、それじゃあね」
「今から」
「ここが泉じゃなかったら」
その場合についてもだ、鉄鼠は二人に話した。
「次は何処に行くのかな」
「ううん、あと泉かも知れない場所って」
「何処があったかしら」
二人は鉄鼠の今の言葉に真剣に考える顔になった、そしてだった。
聖花がだ、こう愛実に言った。
「あと二つよ」
「二つしかないのね」
「そう、後はね」
それだけしかないというのだ。
「大学の時計塔の屋上と」
「あそこね」
「それと理事長室だけれど」
「理事長室って」
幾ら何でもそこはとだ、愛実は引いて応えた。
「入ることは出来ないわよ」
「理事長さんだからね」
言うまでもなく学園で一番偉い人だ、八条学園は私立なので理事長が一番の責任者つまり偉い立場になるのだ。
「まして八条学園の理事長さんって」
「八条家の方よ」
聖花は愛実に答えた。
「世界的な企業グループの経営者の家よ」
「戦前から大財閥で」
「三井三菱みたいなね」
「戦前は爵位も持っていて?」
「伯爵ね」
そうしたことが次々と話されていく。
「世界的な富豪で」
「この学園も経営されていて」
「そんな人のお部屋よね」
「そうよね」
そうした部屋だからだというのだ。
「幾ら何でも入ることは出来ないでしょ」
「ちょっとね」
「理事長室?あそこは何もないよ」
鉄鼠がここでこう言ってきた。
「というか博士の研究室だよ」
「あっ、あそこなの」
「理事長室じゃないの」
「理事長室は理事長さんと限られた人しか入ることが出来ないから噂になっているけれど」
そうした部屋が噂になることはどの場所でも一緒だ、しかし実は理事長室はこうしたこととは無縁だというのだ。
「あそこは何もないんだ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「理事長さんもわし等のことはご存知だから」
妖怪や幽霊のことをだというのだ。
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