第五十六話 鼠の穴その八
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そのライオン達を見てだ、聖花はこうも言った。
「ライオンさんは夜行性だけれどね」
「それでも寝てるわね」
「ネコ科の生き物ってよく寝るけれど」
「だから夜でもなのかしら」
「猫ちゃんなんか一日の三分の二は寝てるからね」
「だからライオンさんもなのかしらね」
猫の語源は『寝る子』から来ているという説もある、とにかく猫はよく寝る生き物である。
「それでなのかしら」
「そうなのかもね」
「猫又さんもよく寝るよ」
鉄鼠は二人の方を振り向いて言ってきた。今彼は後ろ足で歩いている。
「妖怪だけれどね」
「それでもなのね」
「猫ちゃんだけあって」
「僕達もよく寝るから」
鼠もだというのだ、そのことは。
「皆よく寝るよ、むしろ人間の方がね」
「あまり寝ないのね」
「そうなのね」
「そんなに寝なくて大丈夫かっていう位にね」
人間は寝ないというのだ。
「君達だってあまり寝ないんじゃないかな」
「いや、トータルでいうとね」
「結構寝てるわよね」
二人はお互いに顔を見合わせて鉄鼠と話した。
「私達ってすぐ寝てすぐ起きられる体質だから」
「しかも寝てる間は熟睡するから」
この辺りは非常に有り難い体質なのだ。
「だからね、私達もね」
「結構寝てるわよ」
「大体五時間?どんなに少なくても」
「それ位は寝てるわ」
どんなに睡眠時間が短い時でもだというのだ。
「徹夜とかは絶対にしないわ」
「ちゃんと寝てるわよ」
「それでもだよ」
鉄鼠は人間の基準から話す二人に動物の基準から返した。
「わし等から見るとね」
「あまり寝てないのね」
「そうなるのね」
「うん、そうだよ」
まさにそうだというのだ。
「わしもそう思うし」
「ううん、その辺りはね」
「それぞれだしね」
その生物によってだというのだ。
「人間は確かに睡眠時間短い方かも」
「中には一日一時間って人もいたし」
レオナルド=ダ=ヴィンチである。この万能の天才は一日に十五分ずつ四回に分けて寝るだけで充分だった。無論例外中の例外である。
「人間の場合はね」
「言われてみれば短いかも」
「そんなに寝なくて大丈夫なのかなってね」
そう思うというのだ。
「わしは思うよ。博士なんかもね」
「というか博士も寝られるのね」
「ちゃんと」
「うん、寝るよ」
寝る時はというのだ。
「少なくとも昭和の頃の漫画家さんよりはね」
「トキワ荘の人達の若い頃は不眠不休だったそうね」
「三日連続徹夜とかしたって」
「それはよくないわよ」
「そこまで寝ないのはね」
幾ら何でもだというのだ。
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