反董卓の章
第22話 「…………よっ、兄弟」
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からです。
その彼、鬼は――
今にも泣きそうな顔で、わたくしを見ていたのですから。
「あ……」
「――馬正を殺したのは誰だ」
鬼……いえ、その泣きそうな男は。
絞りだすような声でそう言いましたわ。
「俺と馬正に矢を放つように指示したのは、袁紹か?」
「ば、せい……?」
「ち、違います!」
わたくしの疑問を遮るように斗詩さんが叫びます。
「矢を放ったのは唐周という文官です! しかも、袁紹様は影武者扱いで殺されそうになっているんです! お願いです、助けてください!」
「と、斗詩さん……」
「麗羽様はおバカなところはありますが、非道なことはしません! 全部、あの唐周という人に操られていただけなんです! 董卓とのことだって、本来なら宦官を捕らえて都に送るはずだったのに、あの文官がでっちあげたんです!」
「………………」
と、斗詩さん、なにをおっしゃっていますの?
そんなこと……………………………………いえ。
確かにそうですわ。
何故、わたくしは……董卓さんを追い落とそうとしたのでしょう。
董卓はわたくしを陥れようとした張譲を守る側についたから……あら?
確か、張譲は董卓軍にいる呂布に殺されたのですわよね?
なら、董卓さんは張譲と敵対して……あら? あら?
わたくし、董卓さんと敵対する理由なんて、ないじゃありませんの!?
「あの唐周が来てから、全部おかしくなったんです! 何進大将軍の仇を討ったのだって、本当は麗羽様なんです! なのに気がついたら董卓が都を占拠したことになっていて、麗羽様が連合軍の盟主で董卓を打倒しようだなんて……本来の麗羽様ならそんなことしません! 自分が偉いことをしたら、ただ褒めて欲しいだけの人なんです!」
「ちょ、斗詩さん!?」
「気がついたら檄文まで廻っていて! 麗羽様がそんな頭の良いことなんかしません! 高飛車な人ですけど、本当は意外と人目を気にする人なんです! 他人を卑下するにも、大掛かりなことしたら自分が嫌われるかもって閨で愚痴るぐらいなんですから!」
「ちょっと、あの……」
「だから信じて下さい! 気の迷いであの文官の口車に乗ったのかもしれませんけど、非道なことは絶対にしません! まして連合の味方を背後から射ることなんて、人聞きの悪いことは絶対にできない、性根が小さい人なんですから!」
「………………斗詩さん、あとで覚えていらしてよ」
「なんでですかぁ!?」
わたくしの言葉に泣きそうな顔で振り返る斗詩さん。
はあ……でも、そうですわね。
なんでわたくし、あんな怪しい男の言うことをなんでも聞いたのでしょうか。
今になって思えば、斗詩さんや猪々子さんにも相談せず……全部あの唐周という男の言うとおり
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