反董卓の章
第22話 「…………よっ、兄弟」
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るな――)
誰の声?
いや、誰のと言うか……俺だよなぁ。
俺が俺に言う?
どういうことだ?
(気付くな――)
……なにを?
何を気付くなと……何を言っているんだよ。
そんなの……そんなの。
『今までだって、見慣れてきたじゃないか』
「……え?」
思わず、視線を上へと動かした。
そこにあったのは――
「……グフッ」
……誰の顔?
口から血を吐き、その血が俺の顔に振りかかる。
視線を正面に戻せば、その身体を貫いて金属の先端が突き抜けているように見えた。
「……え?」
その先端は鏃であり、それが俺の胸元でAMスーツに阻まれて止まっている。
何本もの目の前の身体から飛び出た鏃は、俺の目の前でぎりぎり俺に刺さらないように止まっていた。
「はは……ぶ、無事、ですか……」
頭の上から声がする。
誰だ?
この声を、俺は知っている。
(それ以上考えるな――)
また声がした。
声ならぬ声。
なのに、俺には確かに聞こえたんだ。
「よ、よかった……やっと、やっと……御恩が、返せました、な……」
「……え?」
目の前で喋るごとに血が滴る。
その顔を見て――俺はそれが誰かにようやく………………理解した。
「ば、せい……?」
「は、は……さ、さすがに、頭は、無敵ではない、でしょう……?」
その口は、血を吐きながらそう呟く。
目だけ動かせば、その全身がまるで矢衾のように幾本もの矢が刺さっているように見えた。
「なん……で……」
俺なんかを――そう言おうとして声にならない。
思考力が極端に落ちているのを、頭の隅で理解した。
理解したけど……それがどうなるというのだ。
「ある、じ……ごほっ……」
また血が口から出て、俺の顔を濡らす。
すでに俺の顔は、自分の血なのか馬正の血なのか――わからない。
「どうか……どうか……大陸を、この国を……梁州のように……誰もが……笑える……」
「あ…………あ…………」
その時見た馬正の顔は……誰よりも穏やかで。
そして……優しく笑っていたと。
俺は……
「貴方なら……必ず……できます…………貴方こそが……」
その笑顔が美しいとさえ――
「わが、ある――」
ドスッ
その額から矢が飛び出して、俺の目の前で止まる。
その瞬間、馬正の目がひっくり返るように白くなり。
貫いた矢が、俺の頬をかすめながら、その頭を垂れた。
「……………………………………――――――」
思考が……止まった。
全てが、闇に。
俺の目の前はただ、赤。
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