反董卓の章
第22話 「…………よっ、兄弟」
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非常時ですから。斗詩は道中のまともなやつを指揮して」
「うん、わかった」
「二人共、わたくしのことをなんだと思っているんですの!?」
わたくしは、叫びながらも視線を遠ざかる男へと向ける。
その寂しげな瞳に魅入られるように――
―― 盾二 side ――
………………
遠ざかる袁紹達の姿が、周辺の煙に紛れて見えなくなる。
「……………………っ!」
腹の中で堪えていた怒りが耐え切れなくなり、奥歯を鳴らした。
必死に我慢していた両の拳が軋む。
今にも吼えて当たり散らしたいのを必死に我慢する。
今にも追いかけて殴りたい。
馬正を殺したことを罵り、八つ裂きにしたい。
そんな後ろ暗い想いが脳内で満ち溢れる。
だが――彼女たちが仇ではない。
(本当の敵は――唐周)
黄巾時代の馬正の副官。
馬正と出会った砦から姿を消した、農民上がりの男。
砦での戦闘の際、姿を消したと思っていたのだが……
(その唐周が、俺を殺そうとしていたなんて、な)
黄巾を討伐しようとしたのだ。
俺を恨む理由はある。
もしかしたら馬正をも恨んでいたのかもしれない。
馬正自身、名前を変えて俺に仕えていたのだ。
(自業自得、なのかもしれない……な)
俺自身が起こした恨みの咎により、唐周に殺されそうになった。
そんな俺を庇って、馬正は死んだ。
そして馬正を殺した唐周を、俺は今殺したいほど憎んでいる。
(因果応報、か……)
唐周自身、黄巾になって誰かを殺しているだろう。
その恨みが俺を動かし、唐周が俺に恨みを持ち、俺を殺そうとして馬正が死に、俺が恨みを――
負の連鎖とはよく言ったものだ。
(理性じゃわかっているが……)
それでも馬正の死に顔がフラッシュバックするたびに、全身が震えるほどの怒りが波のように襲ってくる。
そして目線を上げれば、逃げ惑う兵士の先に怒りのまま戦う愛紗たちの姿が見える。
彼女たちの怒りは正当だ。
だが、だからこそ……このまま続けさせてはいけないと脳裏で叫ぶ俺がいる。
彼女たちが唐周を殺せば、新しい因果の鎖が彼女たちを捉えるかもしれない。
唐周との因果は俺が背負うべきものだ。
因果はどこかで断ち切らねばならない。
なら俺が赦すか?
――否。
俺が赦しても、唐周は周囲を巻き込みすぎた。
殺さねばどこまでも周囲を巻き込み続ける気がする。
ならばどうするか。
(――俺が業を背負うしかない)
どこまでいっても、正解などないだろう。
なら、俺自身の物差しでやるしかないのだ。
(ならば、まずは……この状況を止めよ
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