第一章
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線路は続くよ
僕は子供の頃線路を見ることが大好きだった、駅も電車も。
それでだった、よくお父さんとお母さんにこう聞いていた。
「線路って何処まで続いているのかな」
「それは終点までだよ」
「終点って?」
「線路にもはじまりと終わりがあるんだ」
両親はいつも僕に笑顔で答えてくれた。
「何でもそうだけれどね」
「だから線路にもなんだ」
「はじまりの駅と終わりの駅があるんだよ」
「じゃあ尾張の駅がなんだ」
「そうだよ、終点だよ」
そこがと、僕に教えてくれた。
「そこまで続いているんだよ」
「線路も終わっているんだ」
「何時までも続いているって思うかい?」
「うん」
このことは子供の頃は本当に思っていた。線路は長い、その上に立って向こう側を見ると線路は遥か先にまで続いて見えなくなっていた。
それでだ、僕は実際にそう思っていた。
「終わりがないってね」
「思うんだな」
「けれど違うんだ」
「何度も言うけれど全てのものにはじまりと終わりがあるんだ」
「だから線路もなんだ」
「今度終点まで行こうか」
両親はある時まだ子供の僕にこんなことを言ってきた。
「一緒に」
「線路の終わりまで?」
「そう、行こうか」
「うん、行こう」
僕は目を輝かせて両親に答えた。
「線路の終わりまでね」
「よし、それじゃあな」
こうしてだった、僕はある休日お父さんとお母さんに自分の家がある駅から電車に乗ってだった。ただひたすら先に進んで。
ある駅にまで来た、そこで電車を降りて線路を見ると。
線路が切れていた、僕は生まれてはじめて線路が終わっているのを見て目を大きくさせて驚いた。それで人が一杯乗り降りしている大きなホームの中で。
お父さんとお母さんに、その驚いている顔を向けて言った。
「線路、終わってるね」
「ああ、そうだろ」
「終わってるでしょ」
「線路も終わるんだ」
「そうだよ、はじまりがあってね」
「絶対に終わるのよ」
そうなるとだ、両親は笑顔で僕に話してくれた。
「こうしてな」
「終わりの場所もあるのよ」
「そうなんだ。けれど線路ってとても長いんだね」
終わっている線路の先をここで見た、駅のホームから出ている何本もの線路の先はやっぱり何処までも続いていた。
その消えていく場所を見てだ、僕はまた言った。
「本当に何処までも続いているみたいだけれど」
「違うんだ、それは」
「終わってね。はじまるものなのよ」
「そうなんだね」
僕は生まれてはじめてこのことを知って線路の終わりを見た、そして。
高校に入ると電車通学になった、この時も僕は電車が好きだった。駅も線路も。
その電車の中にいてだ、僕は同じ高校に通っていて同じ電車に乗っ
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