第1部その2:勝つためにはやっぱ特訓じゃね?
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飲むフルーツ牛乳用だ、抜かりはない。
「凄ぇな、これ貸切状態じゃん」
ぶおーんと回る扇風機の音が少しうるさい脱衣所の向こう側、ガラス越しの浴場はその日誰も居なかった。
曜日や時間帯の関係なのかも知れないが、誰も居ない銭湯というのは少し寂しくそれでいて少し嬉しいものだ。
何せ広い風呂を占有できる訳なのだから、毎日畳半分程度の面積のクソ狭い湯船に浸かる俺にとっちゃまさにパラダイスである。
「おっしゃ俺いちばーん」
電光石火の早業で脱衣を済ませた俺は洗い場で汚れを洗い流してから勢いよく湯船に飛び込んだ。
ザボーン!と音を立てて湯柱が上がる。
そして数秒。
「ぁぁぁぁ熱っちいいいいいいい!!!!!」
そして俺は湯船から飛び出た。
所謂お約束である。
「何やってんだよ槍一」
啓太は冷水を浴びて身体を冷却している俺を素通りしながらそう言った。
「大げさなんだよお前、熱いっつても人が入るお湯だぞ、そんな熱い筈が……」
やれやれと言わんばかりの表情で爪先をチャポンと湯船に入れたその瞬間。
「……っほ熱ちゃあああああああ!!!!!」
在りし日のブルース・リーの如き怪鳥音を発しながら啓太は飛び上がった。
これもお約束である。
「……なんだコレ、スー○ージョッキーかっての!?」
また偉く懐かしいものを引き合いに出な啓太。
お前の周囲に削った氷を大量に入れた青タライを幻視したぞ一瞬。
つーかお前は熱い湯に浸かりたい心境じゃ無かったんか?
「若しくは城の前の飛び石かも知れん」
某映画監督繋がりでそう言った俺はとりあえず湯船に備え付けられた冷水のコックを開ける事にした。
マジでこの日俺達が一番だったらしい……湯温計を見たら50度とか表示していやがるし、ここは草津か何かか?
兎も角俺達は湯温が丁度良くなるまで全裸待機する事を余儀なくされた。
それから10分くらい経った頃である。
「あ゛〜〜〜〜」
「ぬ゛〜〜〜〜」
俺達は齢9つの子供の何処から発せられるか分からないような呻きにも似た声を上げて其々湯船に浸かった。
声だけ聴くと二人のジジイが風呂に浸かってんでないかと思う……自分で言うのも変だが。
程よく温度が下がった湯船はそれでも熱い44度、俺達の肌にはまだピリピリとする熱さだがそれが良い。
「あ゛ーーーこれだよこれ、こんなのが良いんだよ」
隣で感嘆の声を発する啓太は間違う事無き親父である、お前は本当に小3のガキなのかと問いたい、問い詰めたい、小一時間問い詰めたい。
だが啓太の言う事にも一理ある、熱い風呂は良いもんだ。
温い湯は眠くなっちまうし、あまり入った気に
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