第一物語・後半-日来独立編-
第六十六章 強くあるために《2》
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いに意味があるということなのだろう。
事態を招いたのは奏鳴自身にある。ゆえに決着は、自身の手で付けなければ気が済まない。
辰ノ大花を治める一族の者が、辰ノ大花をその手で守らないとどうする。なんのための一族だ。
奏鳴の心中はそれで一杯だった。
自分は一人の人であると同じに、唯一辰ノ大花を治める家系に産まれた者だ。
守ってみせる。
与えられた分の借りは返す。
だから今、この時をもって返すことにする。辰ノ大花を、不安な未来から守ることで。
目と目で見つめ合う二人。
真っ直ぐと奏鳴の瞳はセーランを見詰めていた。
「分かった」
とセーランは一言。
「お前なら出来るもんな。よし、後もう一押しだ」
「ああ、やってみせるさ」
心配な点はあるものの、今更言っても奏鳴は聞く耳を立てない。理解したセーランは仕方無く奏鳴を送った。
心配し過ぎだと、奏鳴はセーランに笑みを見せてから前へ行く。
吹き飛ばされた竜神は宙で姿勢を立て直し、奏鳴の横へと移動する。唸りを上げて、合図が出る時を今か今かと待ちわびる。
麒麟もある程度進んだところで足を止め、合図が出るのを彼方も待っていた。
互いのタイミングを見計らう、無言の時が訪れた。
神と堕ち神。
どちらが強いのか。それは分からない。
ただ、どちらが勝とうとも。勝った側の方が意志が強いのは神であっても変わらない。
強い意志は力を呼び起こす。
絶体絶命な場面であっても必ず、意志は力となり逆境を覆す。
それがこの世界での強者だ。
弱い意志は負け続け、強き意志は勝ち続ける。
攻める機会を伺う双方。
正面の敵にのみ集中し、他の物事に対しての注意はさっぱり無い。
どちらも勝つがための集中。
沈黙の二人が動き出したのは、機会を伺ってから数秒後。あまりにも早く出た合図は双方、同じタイミングだった。
「「行け――――っ!!」」
●
竜神は宙を行き、空気を裂いた。対する麒麟は地を踏み、地鳴りを起こす。
衝突が起きたのは間も無くで、圧が掛かったように空気が爆発した。
押しているのは竜神だ。だが、麒麟も負けているわけではない。
力を貯めている。まさにそれだった。
麒麟は竜神を押し返し、巨大な二本の腕を生み出す。
二本の腕は拳を握り、竜神を連続で殴打し始めた。
前のように弱くはない。一発ごとの間は長いものの、打ち付けた際に発せられる音から威力が高いことが分かる。
怯む竜神を追い詰めるかのように来る拳。
実質、三体一の状態だ。
やられ続ける竜神ではない。辰特有の蛇に似たその巨大な身体を使い、尻尾で強烈な一撃を麒麟に浴びせた。
顔面に一撃を受けた麒麟は咆哮し、央信の声と重なった。
「素直に殺られろおおお――!
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