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神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第六十六章 強くあるために《2》
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存在だった。美しく優しく、未熟であるが強くあろうと努力を惜しまない。
 そんな央信に憧れていた。清継自身のこれまでの生涯ゆえに憧れた。
 力を持っていても意味が無い。如何に力を奮い、使いこなせなければ。
「……私をあまり見くびるなよ、清継」
 背後に立つ清継に対し、苦しみのなかで央信は声を掛けた。
 後輩の面倒は先輩が見るものだから。先輩は勇姿を後輩に見せるものだから。
「簡単には天魔にこの身体をくれてやるつもりはない。守るべき者達が私を……いや、織田瓜の名を頼ってくれるまでずっとな!」
 織田瓜・央信。
 彼女はただの人族だ。
 他の種族に比べたらなんの長所も無い、ましてや宿り主でも予言者でも無い。
 無能の人族の一人に過ぎない。ゆえに力を求めた。
 弱いままでは何も守れはしない。自分さえも、仲間さえも。
 央信にとって力無く、何も守れない現実に対して泣くことは最大の恥だと思っている。
 泣いていても何も変わらない。ならば少しでも力を付けるための努力に時間を使う。
 口ではない。実力によって自身の存在を大きくさせる。だが、結局は央信の弱さが天魔を求めた。
 天魔は宿せば強大な力を得る。代わりに身体が犠牲になるが。
 それでも央信は求めた。
 後悔はしていない。
 天魔を宿したことによって黄森は他地域、他国から恐れられるようになった。もしかしたら神以上の力のある天魔を相手にするとなれば、容易く戦争になり、容赦無い天魔の破壊によって国が滅ぶからだ。
 強力な抑止力となる天魔は、リスクに見合った利用価値がある。
 後はどれだけ自分が天魔に抗えるかの、一対一の真剣勝負。
 ならば抗ってみせよう。
「そのためならば腕の一本、二本くれてやる。とうに覚悟は出来ている!」
 言葉の圧が清継の胸を打つ。
 強く、鼓動を刻む心臓へと伝わる央信の意志。
 清継はそれを受け止め、まだ納得いかない部分もあるものの、自分が納得したくないだけなのだと思った。
 覇王会の長であり、地域を治める一族の者だからこその判断だ。
 身分を捨て、黄森に来た清継が口出し出来ることではなかった。
「……解りました」
 返事を聞き、
「繁真、頼んだぞ」
「了解した」
 この場から離れるようにと、素直に口では言わずに繁真に伝える。
 頷き、繁真は理解したが動こうとはしない清継を抱え、去る際の言葉は無いまま戦闘艦を後にした。
 空気を切る音が切なく聴こえ、背後に二人の気配が遠ざかっていくのを感じる央信。
「少し格好付け過ぎたか。ふ、後輩にああ言ってしまったのだ。やらなければな」
 天魔に蝕まれるなかで、央信は天魔のことではなう仲間のことを思っていた。
 守るべき者達。
 自分自身には力は無い。だから天魔に身体を売り、力を得た。
 
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