第八章
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まだ勝負は長い。焦らずいくとしよう」
そしてバスに乗った。横浜は十一四球というシリーズの不名誉な記録を更新してしまっていた。
「戦っていっればそういうこともある」
だが権藤は全く焦らない。そしてバスは宿舎に去って行った。
次の試合の先発は西武は石井貴であった。一五〇キロの速球を武器とする正統派投手だ。しかも気の強さでも有名であった。対する横浜は第一戦で好投した野村である。
この試合でも西武のキャッチャーは中嶋であった。彼は試合前に昨日の試合を振り返っていた。
「横浜はどうも変化球には滅法強いな」
西口もそれにより打たれた。
「だが速球には思ったより強くないな」
潮崎はシンカーを武器とする。だがそれをあえて使わずにストレート主体で攻めると意外と効果があったのだ。
「よし、ここは腹をくくるか」
気の強い中嶋は意を決した。そしてキャッチャーボックスに入った。
彼のリードは当たった。横浜は石井のストレートを攻められなかった。凡打の山を築いていく。
西武はアーチで二点を先制した。だが横浜も石井の速球を黙って見ているだけではなかった。
四回石井を二塁において打席に鈴木が入る。ここで彼は石井貴の打球を完璧に捉えた。
打球は西武球場の外野スタンドに消えた。勝負はこれでふりだしに戻った。
だが中嶋と石井はここで踏ん張った。六回のボークにより招いてしまった危機も乗り切り横浜に勝ち越しを許さない。
そしてその裏であった。高木大成がヒットで出塁すると打席には西武の主砲ドミンゴ=マルチネスが巨体を揺らしながら入って来た。
「頼むぞ、マルちゃん!」
ベンチもスタンドにいる西武ファンも彼に声援を送る。ここは彼のパワーにかけたのだ。
彼はそれに応えた。野村のボールをスタンドに叩き込んだのだ。
「よっし、これで勝ったぞ!」
観客達が総立ちになった。ベースをゆっくりと回る彼をナインが出迎える。
「あとは頼んだよ」
マルチネスはニコリと笑って石井と中嶋に声をかけた。二人はそれに対しニヤリ、と笑って頷いた。
だが横浜も諦めない。九回に決死の粘りを見せ満塁のチャンスを作る。バッターボックスにはチームのムードメーカーであり思いきりのいい佐伯貴弘が入った。
「土壇場でこんなことになるとはな」
東尾はマウンドにいる西崎を見ながら呟いた。
「替えますか?」
コーチが問うた。西崎は右、それに対して佐伯は左である。佐伯は右ピッチャーには強い。
「いや」
それに対して東尾は首を横に振った。
「ここはあいつ等に賭ける」
そう言ってマウンドの西崎と中嶋を見た。
中嶋は迷わなかった。四球連続で外角にストレートを要求した。
「おいおい、四球続けてかよ」
西崎は四球目のサインを見て思わず心の中で呟いた。中
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